第七話 ノアのルームメイト捜し ページ32
勢いよく顔を上げるイライジャ･カリム。私は密かにほくそ笑む。
｢実は私、スーザン先輩の従姉妹なの｣
｢……従姉妹？｣
イライジャ･カリムは失礼にも「似てないな」とボソッと。私も私で、バッサリと告げる。
｢スーは、ウジウジした男には興味ないと思うわ｣
スーは女子寮を率いる頼もしい先輩で、真面目でハキハキとした男がタイプだと言っていた。
それを考えたら、根暗なイライジャ･カリムは歯牙にもかけられないだろう。
｢でも、真面目でハキハキとした年下の男なら、可能性もあるかもね｣
興味半分、警戒半分という、複雑そうな顔をしているイライジャ･カリム。
本を閉じて私の話を真面目に聞き始めた。
｢あとはもう、魔法薬学の校外実習で結果を出すしかないわね。スーはイラムール家の令嬢だもの。きっと薬草採取の実習で結果を出したらなびくわよ｣
｢……そうやって俺を乗せようとして｣
｢せっかくだから乗せられてよ。あなたにとっておきの役目をあげるから｣
｢役目？｣
｢エルダーフラワーのハーブコーディアルをスーに頼まれていたの。これ、今度あなたが届けてあげて。同じ班員の私から頼まれたってことにすれば、話のきっかけくらいにはなるでしょう？｣
｢…………｣
これが効果的だったのか、イライジャ･カリムは長いため息をついた後、
｢はあ。……わかった。じゃあそれを条件に、君達の班に入るよ。その代わり、校外実習での俺の勇姿を、しっかりスーザン先輩に伝えるように｣
｢校外実習での勇姿って、何？｣
｢はああ？ 言っとくけどな。最初の班活動だからって甘く見てると後悔するぞ。ケレアレンの教師は誰も彼も容赦ない。たくさん罠が仕掛けられてるらしいし｣
｢…………｣
｢俺は、兄が通ってたからそう言うの全部聞いてる｣
根暗のくせに、やけに得意気だ。だが実際に、校外実習の内容を知っている者が班員にいるのというのは心強い。やはりこの男を逃すわけにはいかない。
｢わかったわ。あなたの望みは最大限叶えてあげる。私達を使って、あなたのカッコいいところをスーに見せつけるがいいわ。……結果は知らないけど｣
｢大丈夫。結果は見えてる。きっかけが無かっただけで｣
｢はいはい。まあ、班員である私達に興味無くても、名前は覚えてよね。私はルキア･テネーブル。こっちはアリア･デイブライト。そしてこっちは、あなたのルームメイトのノア･フランチェスカよ。とりあえずこの四人で申請するわ｣
｢班長は誰だ？｣
｢はい？ 班長？｣
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2019年12月19日 17時
