ユリアーレ転生物語 (ページ28)

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第七話ノアのルームメイト捜しページ28

ピュアな私は、手で目を覆い隠そうとしたが、
｢ん？｣
もう一人の女子が、この浜辺にやって来た。それはもう捕食者のごとき形相で、前のめりにズンズンと早歩き。緑色のリボンなので四年生だ。
｢あ、修羅場｣
どうやら例のイライジャ･カリム、先輩二人に迫られているみたいだ。
二人の女子の先輩が、あの男を巡ってキャッツファイトをおっぱじめる。
ところで、当事者のイライジャ･カリムはどうしたと思う？
彼ったら、我関せずというように断崖を軽々駆け上って逃げたのよ。
｢なるほど。彼は【地】の申し子なのね。大地に愛された特別な体質……根暗だけど｣
｢ヘタレだよね｣
私とアリアがあれこれ言っていると、ノアが少し居たたまれなさそうにして、
｢どうする。関わりづらいタイプだろう｣
｢いいえ、むしろ逃げ足の速さを見ることができたからよかったわ。イライジャ･カリムをスカウトしましょう。あの身のこなしは、校外実習でこそ生かされるわよ｣
と言うわけで、私達はイライジャ･カリムを捜すことにした。
私の使い魔のゼータに空から捜してもらうと、どうやら学校の外に逃げたとのこと。私達もわざわざ、根暗男子を捜すために学校を出るはめになったのだった。

制服を着てレオルアンの街を駆け巡っていると、色々な人から声をかけられる。
｢いい鉄鍋を売ってるよ～。魔法薬で失敗知らず！｣
｢最近流行りのローブは原点回帰して黒さ。ちょっと前まで藍色だったけど｣
｢杖磨きはいかが？安くしとくよ？あ、最近はいらないんだったけ？｣
などなど。皇都は魔術師が集いやすいので、魔術師相手の商売も多いのだ。
途中、イライジャを見失った。
人が多いのもあるが、水路の多い街なので、似たような橋や入り組んだ路地を行き来していたら、ここがどこだかわからなくなる。
｢三手に分かれて捜した方が早いわ。見つけたら使い魔で連絡を取り合うことにしましょう｣
｢そうだな」「わかったわ」
というわけで、道が三つに分かれる中央広場で、私達は分散。私は真ん中の大通りを歩いていたのだけど、イライジャ･カリムがガレリアに入っていくのを見たので、私もそれを追いかける。ガレリアとは、アーチ状のガラスの天井を掲げるショッピング街で、今日も今日とて人が多い。
｢全く……っ、こんなところでもあの男、壁を歩いて悠々としてやがるわ｣
イライジャ･カリムに人混みは関係ないようだ。重力無視して、建造物の壁や天井にくっついて歩いている。