第五話 入学式 ページ3
覚えがある。昨日、噴水越しに目が合った子だ。
だけど、昨日見たようなオッドアイの瞳ではなく、今は両方とも青色の瞳をしている。
その子はマイクの前に、立ち止まり、
｢……頑張ります。
そしてスタスタと戻っていく。
ええええええ、それで終わり!? 悲壮感に満ちてますけど!?
校長といい無口な首席といい、魔法学校ってやっぱり変わってる。
｢あの子、庶民の出らしよ｣
｢うわお、じゃあ天才肌じゃん｣
喋ってはいけないと言われていたのに、そんなことなど忘れてざわついている生徒達。
それだけ庶民の出で首席というのは珍しいのだ。魔術師の一門に生まれるのと、庶民から魔術師になるのとでは、スタート地点が違うから。
私と違い、何もない場所からここまで来たってことならば、凄いことだ。
ゆえに、二位だった私の闘争心もまた燃えたぎったのである。
ノア･フランチェスカ。名前をしっかり覚えておくわ。
そんなこんなで入学式は終わり、私達は大聖堂を出る。
引き続き、すぐ隣にある大食堂にて、盛大な歓迎ティーパーティーが催された。
入学式は教師陣が取り仕切っていたが、新入生の歓迎会は生徒達が主催しているようで、上級生達による出し物や、生徒会による寮や学校敷地内のルール、年間の行事などの説明が行われる。
ケレアレン魔法学校の大食堂は、ガラス窓の大きい植物に囲まれたレストランという感じで、居心地が良い。テラス席もある。
ちょうど午後のお茶時で、あちこちに置かれた白いテーブルには、美味しそうなケーキやゼリー、ホットサンドなどの軽食がおかれている。生徒は好きな場所に座り、これらをつまみながら中央の丸いステージに立つ上級生の話を聞くのだ。
｢やだアリア！ ブドウタルトよ、これきっとブドウタルトよね！｣
私達の座ったテーブルには、ブドウがたーくさんのったケーキがあり、私はこれが皇都の名物ブドウタルトだとすぐに気がついた。なぜなら、
｢前に、リョウが皇都で食べたって言ってたの。ブドウがいっぱいで、甘酸っぱくて美味しいんだって。絶対これよ！｣
｢リョウていうのは……もしかして私に似ているという？｣
｢そうよ。同い年で、ムカつくくらい何でもできる男だった。あ、私の幼馴染だったの｣
｢ということは、今はテネーブル家にいるの？｣
｢……ううん。今は皇都にいるわ｣
｢だったら、会いに行けるのね｣
上級生達が飲み物のグラスを運んできた。私はそれを受け取りながら、苦笑する。
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2019年12月19日 17時
