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表通りからは少し離れた道に立つ雑貨屋。そこは天人たちがやって来る前からある店が並んでいる通りで、閉店ギリギリの所で私たちは店に滑り込んだ。
「太田さん、いますか?Aです」
「おお、待ってたぞ」
暖簾を潜って声をかけると、軽い足音と共に厳ついご老人が顔を出す。しかし破顔しているために、その威圧感は3割は減っていた。
「具合どうです?」
「Aのお陰でそんな酷いことにはなっとらん。多少痛みが増したくらいだな」
「そうですか。じゃあいつものマッサージと
そこまで悪くないことに安堵しながら奥に上がらせてもらい、痛くないようにじっくりとマッサージをした後に鍼を刺していく。そうしていつも通りの処置を終えると、外は大分暗くなっていた。
「悪いな、こんな時間まで」
「いいえ、お気になさらず。またいつでもおっしゃって下さい」
道具を片付けながら頬笑むと、太田さんは顔を緩めて「いい娘だよお前は」としみじみ呟く。やだ、照れる。
「うちの馬鹿息子の嫁にでも来るか?真選組みたいな荒くれ者の溜まり場にいるのはもったいない」
「うーん、もう暫くは結婚はいいですかねぇ」
「そうか?行き遅れんなよ?」
「あはは、気を付けます。それじゃ、お大事に」
「おう、ありがとな」
決して無理に押しては来ない太田さんに笑いながら立ち上がり、私は店の外に出た。外では東堂さんが変わらず待っていてくれて、急いで駆け寄る。
「ごめんなさい、お待たせしました」
「大丈夫ですよ。それじゃ、帰りましょうか」
嫌な顔ひとつせずに笑ってくれる東堂さんに感謝しつつ、私達は屯所へと向かって歩き出した。日が大分暮れている所為か、周囲にはまるで人がいない。
「大分涼しくなってきましたねー」
「そうですね。今年は残暑がきつくなくてよかった」
「真選組の隊服って黒の長袖ですもんね。今年も熱中症患者が出て大変でした」
コミュ力の高い東堂さんのお陰で、気まずい空気にもならず、他愛の無い会話ができることに内心ほっとした。最近どうしても沖田隊長を前にすると緊張してしまう所為か、何だか気が抜ける。
「そういえばAさんって沖田隊長と付き合ってたりするんですか?」
……が、それもその質問でどこかへ吹っ飛んだ。
「はい!!?」
ぎょっとして東堂さんの顔を見上げると、彼は「あれ、違うんです?」と首を傾げた。
何故、どうしてそうなった。
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まるの(プロフ) - コメント失礼します!ここまで一気見してしまいました...!すごくおもしろかったです!更新楽しみに待ってます!! (9月12日 1時) (レス) @page18 id: 0f64c498bd (このIDを非表示/違反報告)
カニチャンチャカ(プロフ) - 続き楽しみです♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪ (2022年3月6日 14時) (レス) id: cefe10f937 (このIDを非表示/違反報告)
bb - 更新待ってます! (2021年8月18日 23時) (レス) id: c3e9c2aa2f (このIDを非表示/違反報告)
神桜(プロフ) - はじめまして!とても面白い作品で3日でここまで一気に読んでしまいました…更新楽しみにしてます! (2021年7月22日 19時) (レス) id: 86ea1c42a8 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 待ってました!嬉しいです!! (2021年7月20日 22時) (レス) id: 859195a8cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年4月23日 11時