真選組専属医師の悩み３【沖田総悟】

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「あのー……。何ですか、これ？」


屯所に戻った早々、私は何故か大慌てで白いエプロンを着て、マスクを装着し、ゴム手袋をはめた隊士たちに出迎えられた。

そして何故か、女子トイレへと連行されている。


「遠慮はいらねェ!!大丈夫、ゲロインになっても俺たちは一向に構わねェから、早く吐きな!!」

「すいません、意味が分かりません」


どうやら私は外に出ている間に、病人扱いになってしまったらしい。そういえば、今朝変な風に勘違いした隊士たちが騒いでたっけ。


てことはアレ？私もしかして、嘔吐下痢になってるって思われてる？

……伝言ゲーム下手すぎにも程があるだろ。仮にも警察がいいのか、それで。


「あのですねぇ、何で私がノロウイルスに感染したことになってるんですか」

「だって吐きそうって言ってたんだろ？」

「言ってません、誰ですかそれ勘違いしたの」


大体本当に嘔吐下痢になっていたとしても、こんな大勢の男が見守る中で吐けるか。何でドア全開で見守られなきゃいけないんだ、おかしいでしょ。


「とにかく！私は別に病気でも何でもありません！

心配してもらったのはありがたいですが、仮にも医者が自分の体調管理が出来ない訳がないでしょう」


憤然として言うと、隊士たちは顔を見合わせた。


「何か、機嫌悪ィな」

「やっぱこれは、沖田隊長に相当怒ってるって事じゃ……」


ひそひそと話し合うその中に聞こえた単語に、ぴく、と反応してしまう。


というか、何で……。


「何で私が沖田隊長を怒ってるんですか？」


尋ねると、皆は一斉にキョトンとした。


「え、だってAちゃん喧嘩したんでしょ？沖田隊長は謝ったけど、まだ許してないってことなんじゃ」

「は？」


不思議そうな山崎さんの言葉に、思わず間抜けな声が出た。


「……別に喧嘩はしてないですけど」

「「「え？」」」


一斉に間抜け面を晒す隊士たちがどこでそんな事を聞いたのかは知らないが、あれは喧嘩の類には入らないだろう。多分。


「それに、許してないっていうか……。そもそも、今回悪いのは私ですし……」


本当は謝るべきなのは私の方の筈なのだ。だが、謝ったら私が隠している諸々を話さなくてはならない。

だから今こんなに悩む羽目になっているのに。


「まぁ、とにかく。私は病気でもないし沖田隊長と喧嘩もしてません。以上です」


と、誤解を一蹴し、ポカンとする隊士をおいて、私はそそくさとその場を逃げ出したのだった。

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