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(――また、やっちまった)
さっきまでAがいた場所を見つめながら、沖田は自己嫌悪に駆られていた。
『……た、隊長は……。その……。
私の事、どう思ってるんですか?』
不安そうに、けれども必死な目で尋ねられたそれ。
沖田は一瞬、期待してしまったのだ。Aが自身に好意を持った上での質問なのではないかと。
だが、念のためにその意図を聞けば、Aは。
『その、前に隊長が怒った時に、「俺の気持ちも知らねェで」って言ってたので、考えてみようかと……』
完全に好意を寄せられているとは思っていないのがよく分かる答えに、沖田はカチンと頭に来てしまったのだ。
Aの言葉に沖田が一喜一憂するのを彼女は知らない。
だからこそ、まるで彼女に気持ちを弄ばれているような気さえして、苛立ちを我慢しきれずに当たってしまった。
そんな自分への苛立ちを堪えるように、沖田は拳を握り締めた。
「……情けねェ」
ぽつりと零したそれは、重い質量を持って床に落ちていく。痛いくらいの静寂が、沖田には自分を責めているような気さえした。
(泣かせるつもりなんざ、無かったのに)
廊下に落ちた水滴を、沖田は見つめる。まだそこに、彼女の感情がこれでもかと言うほど残っている気がした。
『私だって……、好き好んでこんな……こんな風に生きてるわけじゃない!!』
ボロボロと涙を零しながら叫んだそれは、沖田の脳裏に深く焼き付いた。Aが泣くところも、あんな風に感情を迸らせるところも、沖田は見た事がない。
そしてそうさせてしまったのは、自分がAの気持ちを踏みにじったせいなのだ。と、沖田は重い溜息を吐く。
(俺だって、今より前の関係に戻った方がぜってーいいのに。……上手くいかねェ)
またも自身の浅はかさで関係をこじらせてしまった。
腹立たしさと虚しさのやり場も無いまま、沖田は黙ってその場を後にした。
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伽那 - 一言で言うとこれめっちゃ好き (2019年11月26日 22時) (レス) id: dad38348f0 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 沖田総悟さん» ありがとうございます!!もう!受験早く終われ!!!(泣)じわじわ更新ですが頑張ります! (2018年1月5日 8時) (レス) id: 3282eb2821 (このIDを非表示/違反報告)
沖田総悟 - とっても面白かったです!!キュンキュンもするし、見ながら泣きました‥。更新がんばってください!そして、受験ガンバってくださいね!!応援してます!! (2018年1月4日 19時) (レス) id: b86e1fcd7d (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - にんじん さん» あぁありがとうございます!!(泣)あと9日なんですよねー……ハハ。頑張ります! (2018年1月4日 14時) (レス) id: e79ecf6629 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 受験頑張ってください!応援してます! (2018年1月4日 14時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2017年9月29日 20時