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ぽた、と床に流れ落ちたそれが音を立てる。息が苦しくて、酸欠になってしまいそうだった。
「私だって…、言えるものなら言いたいですよ……っ」
沖田隊長は驚いた顔で、ただ私を見つめている。それが苦しくて、私は視線を落とした。
皆が皆、笑って受け入れてくれるなら、どんなに良いかとこれまで何度も思った。
私は気を抜けば目が雷獣の目に変わってしまう。だから、小さい頃は人と関わる事を許されなかった。
いつも外で遊ぶ子供たちを見ては、それを羨ましく思い、寂しくも思っていた。
それでもそれを我慢できたのは、私以上に人前に出られない父がいたからだ。
私のように目が黒くなれない父は、見る人間が見ればすぐに雷獣だとバレてしまうから。
人の事が好きなのに関われない父を思えば、私の寂しさなんて些細なものに思えた。
そんな私がやっとまともに人と接する事が出来るようになったのは、医者だった母の手伝いをするようになってから。
それはとても嬉しかったけれど、やっぱり本当に親しい人なんて作れなかった。
常に気を張っていなければいけないし、余計な詮索もされないように、距離を置くのが当たり前。
だからこそ、相手が私を信用してくれればくれる程、まるで騙しているみたいで罪悪感を感じていたし、いつも周りに怯えながら生きなければならない理不尽を恨めしく思っていた。
全部話せたらいいのに。そうすれば、父さんも私も、もっと楽に生きられるのに。
何度も何度も、そう思った。でも世界はそんなに優しくない。
だから、父は殺された。母も父と一緒になったから、地球人だったのに殺された。
だから、今こうして生きるしかないのに。望んでなくても、こうするしかないのに。
ぎし、と骨がきしみそうなくらいに拳を握り締める。
「言えるなら――……。
――っそれが許されるなら、とっくの昔に話してますよ!!!」
一方的に言葉を叩きつけて、隊長の顔も見ずに私はその場から走って逃げた。
それが卑怯だと分かっていても、足を止めることだけは出来なかった。
「っ……」
上手く行かない。仲直りがしたかったのに、これじゃあもう出来る訳が無い。
駆け込んだ部屋の襖を後ろ手に閉めて、背を預けながらずるずると座り込む。
「こんなの、ただの八つ当たりじゃんか……」
惨めで苦しくて、新たに零れ落ちた涙が畳に染み込んでいった
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伽那 - 一言で言うとこれめっちゃ好き (2019年11月26日 22時) (レス) id: dad38348f0 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 沖田総悟さん» ありがとうございます!!もう!受験早く終われ!!!(泣)じわじわ更新ですが頑張ります! (2018年1月5日 8時) (レス) id: 3282eb2821 (このIDを非表示/違反報告)
沖田総悟 - とっても面白かったです!!キュンキュンもするし、見ながら泣きました‥。更新がんばってください!そして、受験ガンバってくださいね!!応援してます!! (2018年1月4日 19時) (レス) id: b86e1fcd7d (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - にんじん さん» あぁありがとうございます!!(泣)あと9日なんですよねー……ハハ。頑張ります! (2018年1月4日 14時) (レス) id: e79ecf6629 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 受験頑張ってください!応援してます! (2018年1月4日 14時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2017年9月29日 20時