不仲説。【宇髄天元】

どう思う？ ページ32

『よォ』









『珍しいな、不死川が俺に改まって話なんて』









任務帰りでもないのに不死川に食事に誘われるのは片手で数えられるほどだ。









『どうしたんだ？』









『単刀直入に聞かせてもらう。









お前、Aのこと好きかァ？』









いきなり言われたその言葉に宇髄は少し動揺した。









『……そうだ、と言ったら？』









『ま、恋敵ってとこかァ』









宇髄は不死川がAに想いを寄せていることに気がついている。









…だが、素直に応援する気にはなれなかった。





かといって自分がAを好き、というのも疑問だった。









『…少なくとも、俺にとって彼奴はどうでもいい奴ではない』









『宇髄にしては曖昧だなァ』









『俺にだってわかんねぇものはあるさ』









だけど宇髄はAの本音を知っている。









今のままならきっと榎本は誰も好きにならない。









それどころか自ら命を絶つだろう。









＿＿死んでほしくない。だけど彼奴の意思は尊重したい。









自分自身も同じような悩みを抱えていたからわかる。









死ぬな、と言われても負担になるだけだと。









『ま、かといって俺も弟としか思われてねェだろうなァ』









『…どこまでAのこと知ってるんだ？』









『…死んだ弟がいたこと、くらいかァ』









『ふーん…』









不死川が知らないことを知っている、という優越感を宇髄は少しだけ感じた。









『じゃ、頑張ろうな…色々』









『あァ』









気がつけばかなりの時間話し込んでいて日が傾いていた。

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