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Story.3 ページ5

..



(芹沼 A 視点)







一時限目の古文も終わり、

二時限目の授業は体育理論。



運動音痴とまではいかないが、運動能力が平均より少し下くらいの僕にとっては、その時間というのは苦痛なものだった。



何より、男女別々に別れるというのが嫌だ。

しかも、今日はバレーだという。


個人戦はともかく、団体戦ともなると、男子との距離もそれほど近くなるというわけで。





「サボったのね、A……」

『サボったわけじゃないよ、姉さん』





皆んなとは離れた体育館の端っこで、休憩中の姉さんと仲良く並んで体育の授業を見ていた。


男バレの方を眺める姉さんは幸せそう。

頬を赤らめて、むふむふと鼻息を荒くしている



僕は、そんな幸せそうな姉さんを見るのが好き。


そんなこんなで、じっと見つめていると、不意に姉さんが血走った目でこっちを向いた。





「A!?」

『な、なにーー……っ!?』





グイッと引っ張られて抱き締められる。

刹那、大きな衝撃が身体を襲った。


何が起こったのか分からないけど、多分、姉さんと共に吹っ飛んで倒れ込んだんだろう。





『っ、いた……』





打ち付けた左肩や、左足を庇いながら、身体を起こそうとすると、不意に身体を影が覆った。



そっと視線を上げると、金髪男子の顔。

僕と姉さんの顔横に手をついて、覆い被さるような形になるその姿に動悸が走った。





『っぁ……』

「おいっ、大丈夫かっ! 芹沼二人!」





ずれた前髪は片目を露わにして、その瞳は、間近に恐怖の対象であるその姿を鮮明に映す。

フラッシュバックする光景。





『っは、……ぁ……ッ、……け、ほっ……』





だんだんと呼吸が乱れてくる。

呼吸をしようとすればする程、出来なくなる。


どうやって、呼吸してたっけ。



嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

落ち着かなきゃ、落ち着いて落ち着いて。





「お、おい!? だ、大丈夫かよ!」

『っぁ……、や、め……っ。うぇ……ッ……』

「ちょ、どいてろ、なな! A。おい、苦しいのか? 落ち着け、ゆっくり息を吐いてみろ」





金髪男子が退いたかと思うと、次は黒髪男子が涙でぼやけた視界に映って、手を伸ばしてくるのが見えた。



やだ、やめて、おねがい、さわらないで……。





『っご、ほッ……、ねぇ、さ……、…………』





酸欠で抵抗はおろかもう喋れない。



またあの時と一緒。


震える事しか出来ない自分の弱さを恨みながら、僕はそっと目を閉じた。

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アイス - 更新ってもうしないんですか? (2021年8月9日 12時) (レス) id: a3de5516c6 (このIDを非表示/違反報告)
一夜(プロフ) - とても読みやすくて良かったです!今後の展開(主に六見先輩との絡み←)が楽しみです! (2019年10月31日 21時) (レス) id: cff84df643 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:佐伯 | 作成日時:2019年3月3日 21時

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