20話『確かな命』(上) ページ32
チャージしたインクを、背中向けて打つ。
それが彼女の最後の役目だった。
ー黒インクを補充するためなら…ー
彼女は狙いを外さぬよう、トリガーを引いた。
ーーー
誰かが放った黒インクが、リトの背中……
ではなく、レイの背中に命中した。
レイ「ぅ…!」
レイがリトに覆いかぶさった勢いが強く、リトと一緒に前に倒れた。
リト「っ!」
コハクは目の当たりにした。
黒インクがレイの背中に命中した瞬間を。
倒された瞬間を。
コハク「ぇ……」
声が出ない。今すぐ助けに行かなきゃいけないはずなのに、足が動かない。
その場に立ち尽くした。
リト「離れろ!邪魔だ!!」
その事を知らないリトは、レイを払い退けようとする。
すると、
?「リトくん!!!」
リト「!」
誰か前方からリトの名前を呼ぶ声がした。
それは、ミカだった。
ミカ「リトくん!!リトくん!!」
必死にもがきながら、涙目でリトの名前をずっと呼び続ける。
我に返ってきたのか、リトの目の色、ゲソの色が段々元通りになっていく。
リト「…っ!ここは…」
リトはふと後ろの違和感に気付き、体を起こした。
リト「…レイくん!?!?」
そこには背中に黒インクがべっとり付いて、ぐったりしているレイの姿が。
ミカが目を覚ました時、目の前に広がっていたのは、レイがリトをかばい、撃たれる光景だった。
リト「レイくん!レイくん!」
リトはレイを抱き寄せ、必死に揺らしてみる。
だが、返事がない。生気がすでに無いように見える。
リト「…レイ……くん……?嘘、だよね…?」
リトは突然涙腺が緩んだ。
リト「返事してよ……レイくん……レイくん…!」
レイは目を閉じたまま、寝ているように見える。
リト「……冗談って…言ってよ……」
エイト「インクを出さずに我に返ったとは、これは驚きだな。」
クラウド「…リト。お前の為に死んでいったイカはこれで何人だろうか???」
クラウドは高笑いした。
リトはさっきまでなかった記憶が急に流れるように思い出した。
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作者名:こっこ@amuse | 作成日時:2019年7月1日 7時