安室透の言動がどうしても分からないのですが…誰か取扱説明書をください

episode117 〜快斗side〜 ページ29

貴「付き合ってもない人にキスするってどういう心情でするの？」

Aが昨日知り合ったばかりの俺に相談してきた内容がこれだった

快「(おいおい…普通するか？そんな話…)」

が、俺は昨日初めて彼女に会った時の様子を見てなんとなく察しがついた



快「それは本人に聞くのが一番だと思うけど」

俺は彼女の頭に手を置く

快「ま、相談に乗ってやるから…俺のこと頼れ」

貴「ありがとう…」

そう言った彼女は何かを決心したような、真剣な眼差しに変わっていった


俺は家まで送ってもらった後も

彼女のことが気になって仕方がなかった

快「くそっ……なんだよ……これ…」

とうとう、いてもたってもいられず俺は彼女の家に向かう

インターホンを押しても返事はなく留守のようだった

チラリと外の方を見るとちょうど帰ってきたAを見かけた

……が、彼女の様子がおかしい

目線はずっと下を向いたままでおぼつかない足取りだ

そんな彼女の姿を見た時、ふいに朝の記憶が蘇ってくる

快「(まさか……相談してた男のことかよ……)」

俺は心の中のモヤモヤを抑え彼女の元へ走っていった

快「A！！」

貴「快斗くん……？」

彼女は俺の存在を確かめるように名前を呼ぶ

快「さっきぶりだな！忘れ物取り来たんだけどよ…」

Aに対し何も知らないフリをして明るく振舞おうと思ったが

その時の俺は聞かずにはいられなかった

快「なんか様子が変だと思ったら…どうしたんだ…？」

貴「へ？……そ、そんなことないよ？私は大丈夫！」

彼女は何事もなかったかのように明るく振舞うが

顔を見ると目が潤んでいる

なんで……俺に話してくれねぇんだよ…

快「………なぁ…俺には頼ってくれないのか？…」

言うはずのなかった願望が口から出る

貴「え？……急に快斗くんどうしたの？……」

快「何かあったんだろ？…わかりやすいんだよ……Aは…

　 俺じゃ頼りないかもしれないけど…全部吐き出せ…」

貴「本当に…ギザだなぁ…快斗くんは…」

そう言って彼女はすこし微笑んだ

快「なっ！！俺はお前を心配して……！」

彼女の微笑んだ頬に涙がつたう

その時のAの顔はあまりにも美しくて、儚いものだった

俺は思わず息を呑む

快「っ、A………」

貴「あ、あれ？おかしいなぁ…こんなに泣く予定は……」

彼女はその涙を見せまいと、気づかせまいと

俺から目を逸らして無理して笑った

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