安室透の言動がどうしても分からないのですが…誰か取扱説明書をください

episode92 ページ2

透「しかしAさん…」

貴「なんですか？…」

安心したのも束の間、意味ありげな視線を寄越され、また困惑し始めた

やっぱり嫌だったのか？と思い顔を強張らせてしまう

しかしそんな彼は対照的に悪戯を企む子供のような目で楽しそうに笑う


透「もう’零’とは呼んでくれないんですか？」

貴「ん？……」

その言葉に私は数度瞬いた

同時に脳内でさっきまでのやり取りがリプレイされる

安室さんが家に入ってきてから、今に至るまでの流れを思い返していた途中で私は固まった

顔からサーっと血の気が引く

感極まって抱きついた私は呼んでしまっていたようなきがする

『安室さん』ではなく『零』と

やらかした……！！



貴「あ、あれは…え…っと…その…」

視線をそらして口ごもる


冷や汗をかきながらも必死に言い訳を考えた

間違えました？ いや、何をって話だろう

欲望に正直になってみました？ うん、ドン引きだ

前世ではいつも彼女気取りで『零』呼びだったので咄嗟に出てしまいました？

これではただの自白だ


何とか誤魔化そうとするが頭に浮かぶ案はすべて使えないものばかり

これ無理だ、と察した私は欲望に正直になってみた

貴「呼んでもいいですか…？」

恐る恐る尋ねる


透「もちろん…ですが僕と2人きりのときだけですよ？」

貴「あ、ありがとうございます！！」

よっしゃぁ！！心の中で拳を突き上げ雄叫びを上げた

透「そんなお礼を言われることではありませんよ

　 あと…敬語も外してもらって結構です」

貴「いやいや…」

お礼言っちゃうよあむ…零さん…

改めて心の中で呼んでみるとすごく新鮮味がある

興奮していた私は危うく最後の言葉を聞き流すところだった

敬語かぁ…

ん……敬語？

貴「えっ？！いいんですか！？」

敬語を正しく使っていたかは謎だが

透「もちろんですよ これも2人きりの時だけですからね？」

いやいや！全然いいですよ！安室さ…零さん！！

どうした？今日は？やけにサービス精神旺盛じゃない？



でも…

彼が言った『未来視というものが引っかかる』という言葉

そして彼はその時苦笑していた

けど困ったようなあの表情のときでさえ彼の眼差しは温かいものだった

多分彼は気付いているのだろう

私が全て打ち明けたわけではないと

それでも彼は『問い詰めない』と言ってくれた

もう、彼らを私は傷つけないように…裏切らないように…救えるように…

誓った私だった

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