陽だまりのfancy【バーボンと秘密の恋】

仮面 ページ32

ところで主催者は枡岡だが、彼以外にも多くの著名人がいる。時間が経つと取り巻きの女性たちの中には枡岡以外の著名人のところに行く者もポツポツと現れ始めた。


…そろそろ動く時かしら。


窓際にぼんやり立っていると、外に出ませんかと枡岡本人に誘われた。取り巻きの女性たちは居ないようだ。まさか本人から近づいてくれるとは。


「…私のことかしら？」


枡岡「ええ、アナタをお誘いしたんですよ。バルコニーから月が見えますよ、アナタのような美しい月がね…」


キザなセリフを恥ずかしげもなく枡岡は言い、ウインクした。正直ドン引きであったが、任務遂行のために話を合わせておく。


「あら、素敵な褒め言葉をありがとう。いいわ、外に出ましょう」


私はそう言って自然に彼の腕をとった。ベルモットからハニートラップの極意なるものをいくつか教わっている。


枡岡「…おっと、いい眺めだね」


何のことかと訝しげな私に枡岡はニッコリ笑い、谷間に視線をちらつかせた。





せめて作った笑顔が引きつっていませんように。


こんな仕事引き受けなきゃよかったと強く思いながら私は薄く微笑んだ。


…そう演技という名の仮面を被って。

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