黒い薔薇は白に染まる【降谷零/赤井秀一】

Story 27 ページ29

藤堂仁は本当に上手く立ち回った。徐々に頭角を現し、組織の幹部候補となり、そしてグレーンというコードネームをもらった。コードネームをもらった彼は、ジンと接触し、組織壊滅の瞬間を淡々と狙っていた。





その頃、綾野麗子は学生時代得意科目であった化学を活かし、科学者として宮野夫妻のアシスタント業務を行っていた。



優秀だった彼女は優秀だった彼と恋に落ちた。



そこに赤い薔薇の蕾が咲いた。薔薇の蕾は薔薇の花となり、美しく育った。



父親の背中を見せられて育った。母とは全く会わせてもらえなかった。



母、麗子はNOC疑惑が浮上していた。しかし、疑惑が確信となる前に母は殺された。―――そして父も。



父母の死の詳細は隠され、組織の仕事を叩き込まれた“薔薇の花“は心を失くした。



心が有れば傷付く。心を無くせば、どれだけ自分が他人を殺めようとも傷付かずに済む。



普通の女の子で有りたかったと思う心など神様にくれてやる。けれど神様の存在が有るならば何故、花に儚くて残酷な運命を課したのか――――。



花は一度だけ恋をした。心がまだ有った頃、恋をしたのだ。



花の事を彼は“A“と呼び、Aは彼の事をこう呼んだ。



“聖矢(セイヤ)“

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