バイト歴 第30回 過去編 ページ34
天月side
『いいんですか……？』
「うん、聞きたい」
『はぁ、分かりました……』
彼女は、ゆっくりと、深く、ため息をついた
そして、薄く儚げな唇を、小さく、でも淡々と動かし始めた
『私は存在してたらいけないんです』
『私みたいな人間は、さっさと消えるべきなんです』
『もうこれ以上、誰かを傷つけたくないんです』
始まりは、在り来りな家族の話
少しばかり貧乏だけど、だけど信じられる幸福があって
家族を支えようと、自分なりに決心して、アルバイトを始めてみたと…
お手本のように、家族思いなAちゃんは、はりきっていたらしい
ここまでなら、人を思いやれる、優しい女の子の話です
そう置いて、話は次へと進む
でも、それが"間違い"だった
幸せを過信したゆえに、油断していたのだと
ある日、某青い鳥のサイトから1件のDM通知が、きていた
依頼者X、といういかにも怪しげなアカウント名
にも関わらず、無知で世間知らずでばかな私は応答してしまったのだと
よく分からない内容ながら、自分が始めたバイトのことだとかろうじて分かった
それで、Yesという答えをし、そのままマニュアルを読み、さっそく取り掛かった
初めての案件は名前も聞いたことのない、歌手だったという
翔「その人の名前、覚えてる？」
『っはい…その人は＿＿＿＿＿＿＿＿＿“まふまふ”という方でした』
僕は、聞き馴染んだその名にゴクリとつばを飲み込んだ
つい昨日、些細なことで言い合いになって飛び出してきてしまった
始めたのは7年ほど前だと言っていたから
まふくんが今のように知れ渡っているわけではない
歌ってみたを投稿する、たったそれだけで散々に叩かれる
そんな時代だったからか、アンチなども大量にいてさほど問題にはならなかったという
その頃は歌い手という存在も知らず、そもそも音楽自体に興味がなかったため
自分が発信していることが、どういうことか全くわかっていなかったらしい
そこまで話して、Aさんはぐっと手を握り締め、唇をかみ、肩を震わせた
小さく揺れる肩の向こうで、何かが光った気がした
翔「大丈夫…？辛いなら、やめてもいいんだよ？」
『いえ、最後まで話します、ごめんなさい』
何度か、嗚咽を漏らし、鼻をすすって…
彼女はまた、ゆっくり、ゆっくり、話し始めた
＿＊＿＊＿＊＿＊＿＊＿＊＿＊＿＊＿＊＿＊＿
更新サボってごめんなさい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1737人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨夢(プロフ) - ふとんさん» ふとんさんありがとうございます！ここからどんどんクライマックスに向かってきますよ〜！閲覧ありがとうございます！ (2021年4月8日 18時) (
レス) id: 4203c96784 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん - なんかシリアスになってきたッッッ！ (2021年4月8日 15時) (レス) id: 849ea30030 (このIDを非表示/違反報告)
雨夢(プロフ) - おもちてゃん。さん» おもちてゃんさんコメントありがとうございます！あっ、え、えと…ハンカチ入ります？？？？← 読んでいただきありがとうございます！ (2021年4月8日 7時) (レス) id: 4203c96784 (このIDを非表示/違反報告)
おもちてゃん。(プロフ) - えっあの過去編見てたら目から出てくる汗止まんないんですけど？？？(誉めてます) (2021年4月7日 23時) (レス) id: 9b4a9a9308 (このIDを非表示/違反報告)
雨夢(プロフ) - Lunaさん» Lunaさんコメントありがとうございます！ドキドキさせられて私は内心ニヤニヤです← 最後まで更新頑張るのでどうかお付き合いください(´ω｀) (2021年4月5日 11時) (レス) id: 4203c96784 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨夢 | 作成日時：2019年3月10日 12時
