7-5 伝えるということ ページ9
「Aちゃん…もう、いいだろ…」
言葉を発しないクリスに、Aが一方的に思いをぶつけた時。
御幸がその場にやってきて、なだめるようにAの肩に手を置いた。
そのまま、視線はクリスへと移す。
「…クリス先輩…」
クリスは御幸に一瞥をくれたが、やはり何も言わず、そのまま背を向けて再び歩き始める。
今度はAも追いかけず、何も語らないその背中を見送った。
「…あー…やっちゃった…」
クリスの背中が見えなくなった頃、Aは地面に向かって呟いた。
「…何が?」
「…クリス君の気持ちも聞かず、一方的に爆発しちゃった…」
「ま、そうだな。」
ジャージのポケットに手を突っ込んで、御幸は答えた。
Aが『あんのひねくれハーフがぁーっ!!』と叫んで走り始めた時は驚いたが…。
おそらくAは、自分と沢村のために怒ってくれたのだ。
もちろん、他にも要因はあるだろうが…。
「…けど、ちょっとカッコ良かったよ、Aちゃん。」
心のどこかで自分も感じていたことを、全部言ってくれた気がした。
正直、自分にはできないことで…素直に感心していた。
「…私の勝手な自己満足に過ぎないってことは、わかってるつもりなんだけどさ…」
そう言うと、Aは顔を上げて御幸と目を合わせ、泣き笑いのような表情を浮かべた。
「やっぱり…伝えたいことは、言葉にしなきゃ相手に伝わらないから。どんなに言い辛くても、伝えたい思いがあるなら、ちゃんと言わなきゃ。」
自分を見つめながら言うAに、御幸は軽く瞠目した。
きっと、Aも言い辛かったはずだ。
それでも伝えることを選んだのは、それだけ強い思いがあったからだろう。
…と、その時、突然Aの目からポロッと涙が溢れた。
「…あ、あれ?」
自分でも気付かないうちに流れ落ちてくる涙を、Aは手の甲で拭う。
「ヤバ…なんか、今頃急に…」
それを見た御幸は、自分の頭に巻いていたタオルを取って差し出した。
「どうぞ。ちょっと汗臭いかもしれねぇけど。」
「…ありがと…」
素直に受け取ると、Aはそのタオルで一度目を押さえる。
御幸は片手でグシャグシャと髪の毛を直しながらその様子を見守っていたが、ふと思い付いて聞いてみた。
「…何なら『ここ』で泣く?」
そう言って、御幸は親指で自分の胸を示す。
「…全力で断固遠慮します。」
「…それ遠慮じゃなくて拒否じゃね?」
苦笑いを浮かべた御幸に、Aも小さく笑い返した。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時