11-3 クリスの報告(1) ページ48
「…話したい…こと?」
Aは思わずそう問い返し、きちんと目を見て話をした方がいい気がしてビン底メガネを外した。
時刻は午後10時になろうとしていて、普段なら辺りは真っ暗な闇に包まれているはずだが、今宵は空に満月が輝いている。
ぼんやりとした月明かりの中、クリスはジャージのポケットに手を突っ込み、少し伏し目がちに話し始めた。
「…まずは…今日の試合を観に来てくれて…ありがとうございました。」
「…あ、うん…でも、お礼言われるようなことじゃ…」
「…観て欲しかったんです…あなたにも。」
『あなたにも』ということは、クリスが今日の試合を観て欲しいと思っていた人は他にもいて…十中八九、それは父親のアニマルだろう、と、Aは頭の片隅で考えていた。
「今日の試合は、俺にとって…最後の公式戦でしたから。」
そう告げたクリスの言葉に、Aは軽く目を見張った。
『最後の』、と、いうことは…
「まさか試合に出られるとは思いませんでしたが…もし出られなくても、俺の選手としての最後の試合を、見届けて欲しかったんです。」
そう言って、クリスはゆっくりと顔を上げ、Aに視線を合わせた。
「選手としての道を選んだ自分の気持ちを、最後まで貫けと…背中を押してくれたあなたに。」
「クリス君…」
かける言葉を見つけられず、目を見張ったままAがそれだけ言うと、クリスは再び視線を少し落とした。
「…今日の試合が終わったあと、一軍昇格メンバーが発表されました。」
Aは思わず息を飲んだ。
予想はしていたが、やはりそうだったのだ…。
「選ばれたのは…一年の小湊と、沢村です。」
表情を変えず、クリスは静かに告げた。
なんとなく気付いていたとはいえ、クリス本人から自分は選ばれなかったという結果を聞くことになり、Aはどんな顔をしたらいいのかわからなかった。
思わず目を泳がせていると、それに気付いたクリスが苦笑いを浮かべた。
「そんな顔をしないでください。…悔いは…ありません。最後の最後で、俺は選手として…最高のボールを受けることができたんですから。」
「…最高の、ボール…」
それは、沢村が黒士舘の代打から三振を奪ったあのボールのことだろう。
クリスはAの呟きに軽く頷くと、左手で自分の右肩に触れた。
「…監督からは、まずはこの肩を完全に治すことを考えろと言われました。」
「…クリス君、やっぱり、まだ…」
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時