バイト先は青心寮！【２】

11-2 選ばれるということ ページ47

「俺達にできることはただ一つ…」

そんな沢村に、結城は淡々と、だが迷うことなくきっぱりと告げる。

「選ばれなかったあいつらの分まで、強くなることだ。」

そこにあったのは、一軍メンバーとしての責任と自覚…そして、選ばれなかった部員達の思いを全て背負って戦っていこうという覚悟だった。
結城の後ろにいる、伊佐敷、増子、倉持も、もちろん同じ気持ちであり、『選ばれる』ということは『こういうこと』だということを、沢村に言葉ではなくその表情と態度で伝えていた。

そんな中、壁に背を預けていた御幸がスッと動き、沢村の背後へやってくる。

「…これでもう、とことん突き進むしかなくなったな。」

沢村ではなく地面を見ながら、御幸は静かに告げる。

「俺も…お前も…」

そして…既存の一軍メンバーは去っていき、その場には沢村だけが残された。
静かに肩を震わせているその後ろ姿を、Aは胸が締め付けられるような思いで見つめていた。
空にはいつの間にか、満月が浮かんでいた。

＊ ＊ ＊

ガラガラガラ、と、Aは食堂の扉を開けて外へ出た。
なんだか半分ぼんやりしている間にバイトが終わり、これからアパートへと戻るところだ。
ゆっくりと歩きながら、室内練習場の前での出来事を思い返す。

おそらく…沢村は一軍に昇格したに違いない。
結城の話からもそれは推察できる。
だが…あの時Aが一瞬だけ見た沢村の表情は、決して喜びではなく、悲しみ、悔しさ、やるせなさ…そんな感情が入り交じっていたようだった。

それに、御幸のあの言葉。

『これでもう、とことん突き進むしかなくなったな。俺も…お前も…』

つまり、沢村自身は一軍に昇格したものの、沢村と御幸の二人がともに一軍昇格を願っていた選手は、選ばれなかった、ということで…。
そんな選手は、Aには一人しか心当たりがない。

俯きながら中庭を抜け、グラウンドの前を通って校門までやってきた時。
ジャージのポケットに手を突っ込み、門柱に背を預けて立っている人物に翼は気付き、立ち止まった。
月明かりを浴びながら空を見上げていたその人物は、Aに気付いて体を門柱から離し、向かい合うように立つ。

「…クリス君…」

呆然としながらAが名前を呟くと、クリスは様々な感情が込められた微笑を浮かべ、静かに告げた。

「あなたに…話したいことがあります。」

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