10-14 黒士舘戦―揺さぶり(2)― ページ44
一死二塁となり、再び打者と向き合う沢村とクリスのバッテリーだが、打者は相変わらずバントの構え。
とことん精神的に揺さぶってくる作戦らしい。
負けじと気合いを入れて沢村が投げた球は、クリスのミットめがけて飛んでいったが、その手前で構えていたバットにガコッと当てられ、フェアグラウンドへ転がった。
勢いが完全に死んでいるその打球を取るべく、沢村がマウンドから駆け出してくるが、それより早くクリスが打球に追い付き、三塁へ送球した。
…しかし。
その送球がまたしても大きく上へ逸れ、ベースカバーに入ったショートが飛び上がってなんとか捕球する。
「…セ、セーフ!!」
「うわあああ、サードへのフィルダースチョイス!?」
「一塁も三塁もオールセーフだ!!」
「どうしたんだあのキャッチャー、急に送球が乱れ出したぞ!?」
どよめきが広がるギャラリーの中で、Aは両手をギュッと握り締めた。
やはり、クリスの肩はまだ完全には治っていないのだ。
ブランクもあり、試合形式の中での送球などそれこそケガをして以来なのかもしれない。
その中であれだけ牽制球を投げさせられ、突然の酷使に肩が悲鳴をあげ始めているようだ。
「クリス君…」
眉根を寄せてAがクリスを見つめていると、ガガガガッとバットを地面に引きずりながら、一人の黒士舘の選手がバッターボックスへと近付いていった。
どこか異様な雰囲気を漂わせているその選手は、どうやらクリスと顔見知りだったらしく、彼に気付いたクリスは驚きの表情を浮かべていた。
3回表、一死一・三塁。
打席に立ったのは、クリスと知り合いの代打。
攻撃側としては何でも仕掛けられる場面だ。
スクイズもあるだろうし、犠牲フライでも一点入る。
一塁ランナーを走らせ、バッテリーに揺さぶりをかけてもいい。
エンドランもあるかもしれない。
色々考えられるだけに、守る側としては非常にやり辛い状況だ。
さて、どうする…
Aが固唾を飲んで見守っていると、
「クリス先輩!!」
という沢村の声がした。
「バッター集中でいきましょう!!」
ニッと笑いながらそう言って、くるっとバックを振り返ったかと思うと、
「だ〜はっはっ!ガンガン打たすんでみんなよろしく〜!!」
と叫んでいる。
一見呑気なようにも見える沢村のその言葉が、張り詰めすぎていたグラウンドの空気を緩め、結果的に青道ナインの無駄な力みを取ったのだった。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時