10-5 黒士舘戦―クリス―(1) ページ35
クリスはギリ…と歯を噛み締めた。
たった今目の前で、高島副部長が沢村の進退について監督に進言したところだった。
球威は格段に上がったが、あのフォームを実戦で使うのは早すぎるのではないか。
結果は出ていないが、次に繋がるものを確実に示したのではないか、と…。
つまり、沢村は大きな可能性を示したということで評価を与え、今日のところはこれで交代させてはどうか、ということだ。
確かに、今日のこの試合に勝つことを考えればそうすべきなのかもしれない。
沢村は全くもってコントロールが定まっていないのだ。
…けれど…
「…ア、アイツは自分で考え…この試合で何かをつかもうとしています。」
迷いつつも、クリスは監督に向かって口を開いた。
「もう少しだけ、投げさせてやってください。」
沢村という投手が、今まさに一皮剥けようとしている。
クリスにはそんな予感がしていた。
「…クリス君…」
珍しく自ら監督に願い出たクリスに、高島らが驚いていた時。
「…ここで化けるか…それとも伸び悩むか…」
不意に、片岡監督が呟いた。
「ほんの僅かなヒントを自分のモノにし、急激に才能を開花させる…。俺はそういう選手に何人も出会ってきた。」
真っ直ぐにグラウンドを見つめながら、片岡は続ける。
「この二ヶ月間、毎日タイヤを引き続けた継続力…決して諦めず前を見続けた強い心…」
それは、自分の能力を高め、花開かせるために一番必要な資質。
「化ける奴は一瞬で化ける!!」
キッパリと言い切った片岡に、青道ベンチは息を飲んだ。
「…クリス。この一ヶ月…アイツの球を受けてきたのはお前だ。」
相変わらずグラウンドに目を向けたまま、片岡は隣に立つクリスに話しかけた。
「アイツの持ち味を、活かしてやることができるか?」
告げられたその言葉に、クリスは大きく目を見張った。
たらり、と、額から一筋の汗が落ちてくる。
「何言ってるんですか片岡監督…!クリスは肩の故障が…それに、練習にも参加せず一年のブランクもあるんですよ?」
クリスが息を飲んでいる間に、焦ったように片岡へ話しかけたのは、太田部長だ。
「これじゃあ、頑張ってきた他の選手にも示しが…」
「確かに俺は、クリスにマネージャー転向を示唆した…」
その太田の言葉を途中で遮り、片岡は過去の出来事についてを語り始めた。
図らずも、クリスのことをよく知らない者たちにもその言葉が届くことになる。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時