9-8 試合前夜(2) ページ30
「…お礼言うようなことじゃ…」
そう言って、Aが脚立を降りようとした時。
ずるっ、と足が滑り、バランスを崩してしまった。
「っ!」
前のめりに倒れる自分の体。
驚いて目を見開くクリス。
高かった視点がスローモーションのように低くなっていき、妙に冷静な頭で衝撃に備えて体を固くした瞬間…
ガシッ、と、予想とは違う衝撃に見舞われた。
はずみでビン底メガネが外れて床に落ち、ガシャンとレンズが割れる音がする。
暖かいものに包まれているような感覚に、Aがゆっくり目を開くと…脚立から倒れるように落ちた自分の体は、クリスの胸に受け止められていた。
「…大丈夫、ですか…?」
「ごっ、ごめん…!クリス君こそ、だいじょ…」
Aの言葉は、顔を上げて目の前にクリスの顔がある事に気付いて止まってしまった。
落ちたところを受け止められたのだから、距離が近いのは当然だが…予想以上の至近距離に、思わず顔が熱くなる。
そのまま二人して、言葉が見つからずに無言で見つめ合っていると、ガチャ、と部屋のドアが開く音がした。
ハッとしたクリスが片手でAを胸に抱き寄せ、ドアに背を向ける。
訝しげな表情で部屋の中から顔を出したのは、クリスと相部屋の一年生、金丸信二。
目の前にクリスがいることに気付き、声をかけた。
「…クリス先輩…なんか今、ガシャンって…」
「あぁ…蛍光灯を変えてもらっていたんだが、その…高瀬さんのメガネが落ちたんだ…」
肩越しに金丸を振り返りながらクリスが答える。
抱き寄せられて絶句していたAは、クリスのその言葉に我に返り、クリスの胸の中から慌てて言葉を届けた。
「ご、ごめんねっ。ちゃんと、片付けておくから…」
「破片が飛んでるかもしれない。お前は部屋に入ってろ。」
クリスとAの言葉を聞き、床に散乱しているメガネの残骸を見た金丸は素直に納得し、わかりました、と中へ戻った。
「……あ、あの、ありがと…」
体を盾にして、金丸から自分が見えないようにしてくれたのだと気付いたAは、俯いたままクリスに礼を言った。
「いえ…それはいいんですが…メガネは…」
「あぁ、それならたぶん…」
その後、素早くその場を片付けて二人は管理人室へ向かった。
そこにいた涼子に事の次第を報告し…
「メガネ?あるわよ、あと三つくらい。」
「…ね?」
当たり前のように答えた涼子と、それを予想していたようなAに、クリスは額を押さえて俯いた。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時