9-7 試合前夜(1) ページ29
次の日の夜。
夕食が終わり、Aが食堂で一人でモップをかけていると、クリスが入ってきた。
「…すみません、高瀬さん…」
「クリス君。どうしたの?」
「…二階の通路の蛍光灯が切れかかっていて、点滅しているんです…」
「え、マジで?すぐ交換するね。」
そう言って、Aはモップを置き、厨房の奥の棚から予備の蛍光灯と脚立を取ってきた。
「二階のどの辺?」
「…俺の部屋の前ですが…」
「わかった。」
「あ…高瀬さん…」
Aがその場所へ向かおうと食堂を出ようとすると、後ろからクリスが声をかける。
「…それ、貸してください。俺が変えておきます。」
「…え、と…じゃあ、お願いしようかな…」
クリスの申し出に、悩みつつもAは蛍光灯と脚立を渡そうとしたが…直前で思い直した。
「…いや、やっぱ私が変えるよ。これも私の『仕事』だから。」
ニッと笑ってクリスを見上げて言うと、Aは今度こそ食堂を出た。
「ほんとに部屋の真ん前だね。」
「…はい。」
二階の通路に到着してみると、クリスの部屋の前の蛍光灯が不規則な点滅を繰り返している。
Aは脚立の足を広げ、その蛍光灯を外し始めた。
すると、クリスは部屋には入らず、ジャージのポケットに手を突っ込んで壁にもたれかかり、Aの作業を見守る。
「…高瀬さん。」
Aが蛍光灯を外し終わって一旦脚立から降りた時、クリスが視線を下に向けたまま話しかけてきた。
「何?」
「…明日…二軍の最後の試合があります。」
「…うん…そうみたいだね…」
果たしてクリスは…試合に出ることができるのだろうか…。
そう思いながら、Aが手に持った蛍光灯を床に置き、新しいものを取って体を起こすと、視線を上げたクリスと目が合った。
「…明日の試合、見に来て…もらえませんか?」
静かに告げられたクリスの言葉に、Aは軽く目を見張った。
「…たぶん、俺は…試合には出られないと思います。でも、沢村は登板することが決まっていますし…」
「クリス君…」
そう呟いてから、Aは脚立に登りながら答える。
「昨日、沢村君に試合のこと聞いてね…」
ガチャン、と、Aが新しい蛍光灯をはめ込むと、一瞬間を置いてから白い光が点灯した。
脚立の上からクリスを振り返り、Aは柔らかく微笑みながら告げた。
「もちろん、見に行くよ。」
Aのその返事を聞いて、クリスは瞳を和ませた。
「…ありがとうございます…」
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時