9-6 6月 ページ28
どんよりとした曇天の日が増える中、5月は足早に過ぎ去り、6月に入った。
ねっとりと体にまとわりつくようなジメジメした空気に、梅雨入りも近いことを感じる。
金曜日の夜、Aがアルバイトを終えて帰ろうとグラウンドの前を通りかかると、ズッズッとタイヤを引き摺りながら誰かが走っていた。
「…あれ…沢村君?」
「はっ、はっ、…ん?あ、ガリ子さん。今帰りですか?」
「うん…沢村君、今日もタイヤ引いてるんだ。」
「はいっ。もう日課ッスから!」
そう言って沢村はニカッと笑ったが、すぐその表情は今夜の空のように曇ってしまった。
「…?どうかした?」
「…俺…明後日の試合で投げることになったんスけど…」
「え?ほんと?良かったじゃん!」
Aは思わず笑顔を溢した…が、沢村の表情は晴れない。
「…次の試合が、二軍での最後の試合になるらしくて…」
「…え?」
「その結果で一軍に上がる選手を決めて、夏までは一軍を中心に練習していくらしいッス…」
「…そうなんだ…」
ということは、二軍の選手にとって明後日の試合がラストチャンスということになる。
「…俺…俺、クリス先輩に何も返せてなくて…最初からちゃんと捕手として接してくれてたあの人に…少しでも成長した姿を見せたいんスけど…今度の試合で、バッテリーを組みたいんスけど…」
ギリ、と、歯を噛み締めながら沢村は言った。
クリス先輩は、もう試合には出ないのか?
自分はクリス先輩とバッテリーが組みたい。
そう言った沢村に、クリスは…
『試合に出るかどうか決めるのは俺じゃないさ…とにかく、お前はチャンスをもらえたんだ。悔いの残らないピッチングをしろよ。沢村…』
そう言って、沢村の肩を叩いて去っていったらしい。
その話を聞いて、Aはギュッと拳を握り締めた。
沢村は、クリスとバッテリーを組みたがっている。
クリスだって、試合に出たいはずだ。
でも…二人がバッテリーを組めるかどうかは、二人の気持ちとは別の問題。
いつの間にか俯いていた顔を上げ、Aは真っ正面から沢村を見つめた。
「…今わかってるのは、沢村君が明後日の試合で登板するってこと。だから、まずは沢村君が…自分の力を全部出し切らなきゃね。どんな形にしろ、クリス君は見てくれてると思うから…」
Aがそう言うと、沢村は軽く目を見開いたあと、神妙な顔で頷いた。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時