バイト先は青心寮！【２】

9-5 続・買い出し(2) ページ27

スポーツ用品店での買い物が終わった後、御幸がもう一軒行きたいと言い出し、Aと御幸は同じビルに入っているカジュアル衣料品店へ向かった。
御幸は単にTシャツを買いに来ただけのようだったが、通りかかった帽子売り場に吸い寄せられ、色々試着を始めてしまった。
何を被ってもそれなりに様になる御幸を見て対抗心に火がついたAも試着を始め、それはないわ、こっちもアリだね、と二人で言い合い、 結局御幸は帽子一つとTシャツを買って店を出たのだった。



「Aちゃん、ホントにコーヒーだけでいいの？」

「うん。家に帰って適当に何か作るから。…御幸君は…それ食べて帰ってからまたご飯食べるの？」

「当然。」

買い物を終え、二人は近くのファーストフード店に来ていた。
付き合ってもらったお礼に何か奢ると御幸が言い、ならば、とAが選んだのがファーストフード店のコーヒーだったのだ。
一方で御幸は普通にハンバーガーのセットを頼んでいる。

「…何？どうかした？」

そのハンバーガーにかぶりついていた御幸は、Aがキョロキョロと辺りを見回しているのに気付いた。

「え？あ…うん…なんていうか…今日はいつもより視線を感じるというか…」

あははは、と頭を掻きながら言うAに、御幸は軽く嘆息した。
率直な感想としては…『今頃？』だ。
確かに今日はよく見られている。
スポーツ用品店からずっと。

「…ま、仕方ないじゃん。」

「仕方ない？何が？」

きょとん、と問い返すAに、御幸はテーブルに身を乗り出して真顔で答えた。

「俺たちが美男美女カップルだから。」

「…カップルじゃないでしょ…」

「他人から見たらカップルにしか見えねぇよ。っつぅか、美男美女ってところは否定しねぇの？」

「そ、それは…」

赤面しつつ言葉に詰まるAに、御幸は頬が緩みそうになる。

「み、御幸君がイケメンだから女の子たちが見るんだよ…！」

「俺は男の視線ばっか感じるけど？」

「お、男の子にもモテるんですねー…」

「…んなわけねぇじゃん…」

自分の容姿には言及しようとしないAに苦笑しつつ、御幸は片手で机に頬杖をついた。
ひた、とAの目を捉え、真っ正面から言い放つ。

「Aちゃんが可愛いからだよ。」

「っ！」

逃げ場を塞がれたAは、目を泳がせたあと手元のコーヒーを飲んだ。
…が、それはまだブラックの状態で…

「…にがっ！」

結果、またしても御幸に盛大に笑われてしまったのだった。

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