8-10 切ない痛み ページ21
顔を上げると、そこにはクリスがいた。
そのクリスはスッと手を伸ばし、Aの左手首を軽く掴む。
「…擦りむきましたね。」
「え?…あ、ほんとだ。」
クリスの視線を追って自分の左腕を見たAは、手首と肘の間を擦りむいていることにようやく気付いた。
「…とりあえず洗いましょう。」
そう言うと、クリスはAの手を引いて立たせ、水道のあるところまで連れて行った。
「痛かったら言ってください。」
Aにそう言ってからクリスは蛇口をひねり、傷口に流水を当てつつ、手で軽く擦って洗い始めた。
「いった…!しみるしみる痛いしみる!!」
「我慢してください。」
「何そのヤブ歯医者みたいな返し…!」
洗ってくれるのは有難いが、手加減というか優しさというか思いやりがほぼ感じられないのは気のせいだろうか。
擦り傷の手当てはまず患部を綺麗に洗うことだということは、わかってはいるけれど。
ジンジンヒリヒリと襲い来る痛みに耐えていると、ようやくクリスが洗うのをやめて水を止めた。
「…これくらいでいいでしょう。」
「あ、ありがと…」
ひょいと傷口を見ると、砂で黒くなっていたところがすっかり綺麗になっている。
あとは消毒しておけば大丈夫だろう。
「…クリス君…さっき…」
腕を下ろしつつ、視線は地面に向けたまま、Aはクリスに話しかけた。
…が、それから先の言葉が続かない。
先ほどクリスはブルペンで、沢村に大きなアドバイスを与えた。
エースになる、という沢村の目標を達成させるための方法を、捕手の立場から的確に説明したのだ。
基本である身体作りに関しては、メニューを巻物に書いてすでに渡している。
しかし…
『 御幸なら、どんなクセ球でも受け止めてくれるさ 』
沢村が、アドバイス通り自身のクセ球を磨き上げ、エースになれたとしても。
その球を受けるのは御幸であり、自分ではないだろう。
まるでその未来が見えているかのような言葉に…それでいて穏やかなクリスの表情に、胸が締め付けられるような切なさを感じた。
「…ごめん。何でもない。」
結局、Aは自分の発言を打ち消した。
そんなAを見下ろしながら、クリスは口を開く。
「…高瀬さん…もうすぐ、二軍から二人の選手が一軍へ昇格することは知っていますか?」
「…うん。この前、聞いた。」
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時