8-9 三年生から一年生へ ページ20
「土台となる身体がしっかりと出来上がり球威が上がれば、お前の球は今以上に暴れるハズだ。」
ドクン、ドクン、と、沢村は相変わらず自分の心臓の音が耳に響くのを感じていた。
土台となる身体…そう聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、クリスとバッテリーを組んですぐに渡された、基礎トレーニングのメニューが記された巻物。
ちょっと待て…それじゃあ最初から…俺のことを考えてあのメニューを!?
「…お前の目標は、エースになることだろう?」
スッ…と立ち上がりながら、クリスが言う。
「御幸なら、どんなクセ球でも受け止めてくれるさ。」
沢村は、ギリ、と歯を噛み締めた。
確かにそうかもしれないが…
「け…けど、それじゃあクリス先輩は?」
たった今、野球のことを何も知らないバカな自分に大きな助言をくれたのは…目の前にいるこの人なのだ。
「引退のせまってる三年の俺が…お前にできるアドバイスなどこれぐらいなもんだ。」
どこか自嘲気味にそう言うと、クリスは穏やかな表情を浮かべて顔を上げた。
「焦らず上を目指せ。お前にはまだまだ先があるんだからな。」
一年生と三年生。
残された現役選手としての時間は、学年と反比例している。
「アイシングだけは忘れるなよ。」
そう言って去っていくクリスの背中を、沢村は歯を噛み締めながら見送った。
かけるべき言葉が…見つからなかった。
クリスが静かに去っていき、沢村はブルペンで立ち尽くしている。
どちらに声をかけるか…あるいはどちらにもかけないか迷ったが、Aはクリスを追いかけることにした。
沢村を気にしつつクリスが去っていった方へ走り、声が届きそうな距離にその背中を捉えた時。
足元の確認が疎かになっていて、Aは地面の凹凸に足を取られ、ビタンッと見事に転んでしまった。
はずみでビン底メガネが外れ、カシャンと地面に落ちる。
「…何やってるんですか?」
物音に気付いて振り返ったクリスが、地面にへばりついているAへ声をかけた。
「いや、ちょっと、大地に額をつけて感謝の祈りを…」
「…ただ転んだだけでしょう…」
「…わかってるなら聞かないで…」
大学生にもなって盛大に転んでしまったことが恥ずかしくて、Aは赤面しながら体を起こした。
すると、クリスが微かに眉を寄せたが、俯いているAは気付かない。
「あーあ…恥ずかし…」
地面に膝をついてメガネを拾い、体についた砂を払っていると、すぐ目の前に誰かが座る気配がする。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時