バイト先は青心寮！【２】

8-7 二軍の練習試合 ページ18

5月第4週目の日曜日。
この日は青道高校Aグラウンドで、青道の二軍と朝倉北の練習試合が行われていた。

人手が足りないと朝から駆り出されていたAは、中抜けの休憩時間に、ついでだからと試合を観戦しにグラウンドへ向かった。

二軍の試合とは言え、グラウンド周辺には熱心なファンやOBたちが観戦に訪れており、Aは彼らの隙間からグラウンドを伺う。
Aが到着した時は、青道が守備についており、朝倉北の攻撃が行われていた。

キィンッ！とバットの金属音が鳴り響き、打球は勢いよく一・二塁間を抜けてライト前へ…かと思いきや、セカンドの守備についていた春市が追い付いて捕球し、軽やかな身のこなしでファーストへ送球してアウトをとり、スリーアウトチェンジとなった。
途端に、観客から大きな歓声が沸く。

「おおおぉ…止めやがったぁ！！」

「ありえねーだろあの守備範囲！」

「あれで二軍の選手かよ！」

「どんだけ厚いんだ青道の選手層は！！」

アウトをとった春市自身は、特にガッツポーズをするでもなく顔を赤くしながらベンチに戻ってきたが…先ほどのプレーは本当に素晴らしいもので、Aも驚くと同時に感心していた。
以前増子が、春市のことを『 一年の中では総合力で頭一つ抜けてた感じだ 』と言っていたが…なるほどこういうことか、と納得する。
まだワンプレー見ただけだが、あれがまぐれではなく、春市の実力なのだということは、すんなりと理解できた。

その春市を視線で追っていたAは、そのままベンチの中のメンバーを見渡し、沢村とクリスの姿がないことに気付いた。
先週先発し、打ち込まれて降板させられた沢村は、今日は登板することはないのかもしれない。

…と、その時Aは、ブルペンに人影があることに気付いた。
もしかしたら、沢村とクリスかもしれない。
試合も見たいが、未だに沢村のピッチングを直接見たことがないAは、ブルペンの近くへ移動することにした。



パアァンッ！！

「どうっスか、今の球！！」

「…バックスクリーンに三本連続だな…」

「なぜ！？」

「バッターは、バース・掛布・岡田だからだ。」

「ミットはいい音してるのにー！！」

ブルペンに近付くと、ボールがミットに収まる小気味良い音とともに、沢村とクリスの声が聞こえてきた。
投球練習をしていたのは、やはりこの二人だったのだ。

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