8-5 練習試合結果(2) ページ16
「あ、小湊…春市君。」
「はい。えっと…何か?」
Aが思わず名前を口にすると、春市は軽く首を傾げた。
サラリ、と、長い前髪が揺れる。
「…かわいい。」
「はい?」
「あ、いや、何でもないよー。おかわりね、はいはい。」
あはははー、と笑いながら、Aは春市から茶碗を受け取り、ご飯をよそった。
春市と直接話をするのは今日が初めてだが…男子高校生にあるまじき可愛らしさに、思わず家に持って帰りたくなる。
…と、そんなAを半目で眺めていた御幸が、ふと春市に視線を向けた。
「そういや小湊、今日沢村はどうだったんだ?早目に交代させられたみてぇだけど。」
御幸のその言葉を聞いて、Aも手を止めて春市を見た。
「栄純君、ですか。はい、確かに交代させられてましたね。まぁ、今日のあの調子じゃあ当然でしょうけど。」
顎に手を当てながら春市が言う。
意外にも厳しい物言いに、Aは軽く目を見張った。
どうやら可愛らしいこの花は、鋭い棘を隠し持っているらしい。
「なんだか余計なこと考えてるみたいでしたよ。ボールにも勢いがなかったし、後ろで守ってても、いつもみたいにワクワクしなかったですね。」
「そうか。…ま、バカなりに色々考えてんのかもしんねぇけどな。」
「一軍昇格の件もあるし、次は頑張って欲しいですけどね。」
「…一軍昇格?」
春市の言葉に気になる単語を見つけ、Aは思わず問い返した。
すると、春市がクリッとAに顔を向ける。
「はい、そうなんです。今、一軍の選手の数は18人なんですけど、夏の東京都大会の選手枠は20人。つまり、夏までに二軍から二人の選手が選ばれるみたいなんです。」
「…そうなんだ…」
そうなると…二軍の選手たちはかなり気合いが入っていることだろう。
「…あ、ごめん、はい、小湊春市君。ご飯。」
数秒間ぼーっとしていたAは、手元の茶碗に我に返り、ご飯をよそって春市に渡した。
そんなAに、春市はクスッと笑う。
「春市で大丈夫ですよ、高瀬さん。フルネームだと長いから。」
「そう?じゃあ春市君、ね。」
「はい。ありがとうごさいます。」
そう言うと、春市はニコッと笑い、茶碗を持って席へと戻って行った。
「…持って帰りたい…」
「拉致は犯罪ですよー。」
春市を見送りながらAが呟くと、この人なら本当にやりかねないと思ったのか、御幸がカウンターに頬杖をつきながら釘を刺した。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時