8-3 一歩前へ ページ14
「あなたのおかげで、俺は自分を嫌いにならずにすみそうです…」
上から聞こえたその声に、Aは思わずクリスを見上げた。
チラ、と、そのAを横目で見下ろして、クリスはさらに足を進め、階段を降り始める。
これは、あの生意気な発言を許してもらえた…というか、水に流してもらえたということだろうか…。
Aは口を半分開けたまま、クリスを見送っていたが…ハッと、先ほど沢村が言っていたことを思い出した。
もうこの際、聞きたいことは全部聞いてしまおう。
「あ、あのさ、クリス君!」
クリスを追って階段を降りながら、Aはその背中に問いかけた。
「今朝、沢村君の球受けてあげたんでしょ?その時沢村君に、お前の持ち味は何だ?って聞いたと思うんだけど…」
「…沢村から聞いたんですか?」
足は止めずにクリスが聞き返す。
「うん。さっき、俺の持ち味って何ッスかね?って聞かれてさ…」
「…アイツ…高瀬さんに聞いてどうする…」
「急だったから、沢村君の長所答えちゃったけど…あれって、やっぱ投手としての持ち味ってことだよね?」
階段を降りきり、一階の通路を歩きながらAが聞くと、クリスは軽くため息をついた。
「…高瀬さん。先日、御幸が言っていたこと…沢村には言わないでください。」
「えっ?御幸君?」
なんだか話の流れがよく見えない。
「沢村に、自分で考えさせないと意味がないので。」
チラ、と、再び横目で見られて…Aはおぼろげながらクリスが言っている意味がわかってきた。
クリスのあの質問は、やはり投手としての持ち味のことを指しているのだ。
そして、御幸が言っていたこと、というのは…
『 荒削りな才能にあのムービング…捕手から見れば、あれほど扱いづらく魅力のある投手はいないでしょう? 』
あの言葉のことだろう。
…と、Aが頭の中で二日前の出来事を再生していた時。
クリスがピタッと足を止め、Aに向き直った。
「…それで…どこまでついてくる気ですか?」
「…え?」
考え事に夢中になっていたAは、クリスの言葉にようやく顔を上げ…気付いた。
クリスが止まったこの場所は…
この扉の向こうは…
「…一緒に入りますか?俺は構いませんが。」
顔色一つ変えずにクリスにそう言われ、Aは真っ赤になりながらブンブンと両手を振った。
「お、お風呂…!ごめっ、ご、ごゆっくりー!」
AはくるっとUターンして、再び階段目掛けて駆け出した。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時