8-1 質問 ページ12
「…沢村君の持ち味?」
Aがクリスに自分の言葉をぶつけた翌々日。
食堂の床を拭いていたモップを持ったままAが問い返すと、目の前の沢村はコクリと頷いた。
その沢村は、メモ帳とシャーペンを持ち、目を輝かせながら答えを待っていて、妙に気合いが入っている。
「うーん…前向きで、諦めないところ、とか?」
「ほほう…前向き、で、諦めない、と…」
「…ってか、何?どうしたの?」
「あぁ、実はですね…」
と、沢村は今朝の出来事を話し始めた。
珍しくクリスが沢村の球を受けてくれたらしいのだが、最後にある質問をされたらしい。
『お前の持ち味は、一体何だ?』
と…。
「俺は、降谷のような豪速球も、丹波さんのようなカーブも投げられない。じゃあ、俺の持ち味は何だ?ってことなんスけど…」
沢村の話を聞いて、Aはモップの柄に手と顎を乗せて考えた。
先ほどは、沢村が唐突に『俺の持ち味って何ッスか?』と聞いてきたので、思わず沢村の長所を挙げてしまったが…。
クリスが言っているのは、沢村の『投手としての持ち味』の事ではなかろうか。
「…沢村君、それってさ…」
「あっ!涼子さんっ!俺の持ち味って何ッスかね?」
Aが自分の考えを言いかけた時、沢村は厨房の中に涼子を見つけ、そちらに駆け出した。
「沢村君の持ち味?」
Aと同じように問い返したあと、涼子は表情を変えずに続ける。
「バカで単純でバカで真っ直ぐでバカで融通が利かなくて…」
「なんで2回に1回バカが入るんスかっ!!」
「だって沢村君、バカなんだもの。」
「バカバカ言わないでくださいよ、おばちゃんっ!」
沢村がそう言った瞬間、涼子の回りの温度が一気に下がったのがAにはわかった。
…さらば、沢村。
と、心の中で呟く。
「…沢村くぅん?」
にっこりと微笑んで、涼子が沢村を呼んだ。
その声に、ようやく自分の失言に気付いたのか沢村が慌て始めたが…もう遅い。
ガシッとカウンター越しに涼子に捕まり、沢村はこめかみにグリグリとゲンコツをねじ込まれた。
「あだだだだだっ!」
「今何て言ったのかしらぁ?」
「り、涼子様っ!許してつかぁさい!」
「これで何度目かしらねぇ?」
「ガ、ガリ子さんっ!お助けをー!」
こちらに助けを求める沢村に、涼子と同じくにっこり微笑んでAは言った。
「沢村君…骨は拾ってあげるから、安心してやられてね!」
「そんな殺生なあぁぁ!!」
夜の食堂に、沢村の叫び声が響いた。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時