6-7 勝てなかった人(1) ページ2
「なんかこう…手のかかる弟って感じ?」
「…弟?」
「うん。…何やらかすかわからない、真っ直ぐバカな弟が、俺はエースになる!っつってがむしゃらに頑張ってるのを、呆れながらも思わず応援してしまう姉の心境。」
Aが自分の気持ちをそう説明すると、御幸が片手で口元を覆ってプッと吹き出した。
「ま、真っ直ぐバカって…!」
Aちゃん、おもしれー、と言いながらケラケラ笑い始める御幸に、Aは若干ムッとしながら小さく嘆息した。
「…言っとくけど、御幸君も沢村君とは違う意味で手のかかる弟だよ。」
「俺も?」
「自分のやりたいようにしか動かない、マイペースで生意気な弟。」
「はっはっはっ。そりゃどーも。」
「…誉めてないんだけど…」
「ま、俺の事はともかく…沢村のこと応援したくなる気持ちは、わかる気がするな。」
そう言うと、御幸は肩に担いでいたバットを降ろし、杖のように先端を地面につけて空を仰ぐ。
フワッと吹いた夜風が、御幸が後頭部で結んでいるタオルの端を揺らした。
「けど、心配しなくても沢村は、あの人に…クリス先輩についていけば、間違いなく成長できるからさ。」
そう言った御幸の目には、初めて見るような穏やかな光が宿っていた。
そこにあるのは、ある種の思慕。
同じポジションの一学年上のクリスのことを、御幸は尊敬し、慕っているように見える。
「…御幸君…クリス君のこと…好きなの?」
「…は?」
御幸の横顔を見つめながらボーッと問いかけたAは、ぎょっとしてこちらに顔を向けた御幸の声に我に返り、慌ててブンブンと手を振りながら言い直した。
「ご、ごめん間違えた!そうじゃなくて、えっと…クリス君のこと、かなり高評価っていうか…信頼してるように、見えたから…」
「…あぁ。そういうこと。」
フッと小さく笑いながら、御幸はまた空へと視線を戻した。
「…俺、シニア時代に…中学の時に、何回かクリス先輩のチームと試合したことあるんだけど…」
そう言うと、御幸はニッといたずらっぽい笑みを浮かべた。
「一回も勝てなかったんだな、これが。」
「…え…そ、そうなの?」
Aは驚きを隠せなかった。
御幸自身も、かなりレベルの高いプレーヤーのはずだ。
それは試合を見ればわかるし、この強豪校で一年生からレギュラーを務めていることからも推察できる。
その御幸が、中学時代に一度も勝てなかったとは…。
どうやら、クリスは本当に凄い選手らしい。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時