6-6 遭遇 ページ1
「じゃあ、お先に失礼しまーす。」
「はーい。気をつけて帰るのよー。」
涼子の声に送られて、Aは食堂から外へ出た。
涼子と言えば、クリスがAの地味子へのプチ変装に気付いていたことを、Aはこの日ようやく涼子に話したのだが…
『うん、まぁ、そうでしょうね。』
というこの上なくあっさりした返事が返ってきた。
『クリス君が気付くことは想定内よ。ペラペラ喋ったりする子じゃないから、これからも今までと同じようにしてなさい。』
顔色一つ変えずにそう言って、涼子はすぐさま仕事に戻っていったのだ。
「…あ、でも、確か涼子さん…初日に、クリス君なら気付くかも、みたいな反応してたな…」
星のない、雲の幕がかかった夜空を見上げながら、Aは呟いた。
涼子もクリスも、お互いの性格や特徴をびっくりするほどよく把握している。
クリスが言っていたことが事実なら、Aの変装に気付いてから一週間ほど経過しているが、今のところ他の寮生がAの素顔の事に気付いた様子はない。
涼子の言う通り、クリスは誰にも喋っていないのだろう。
「…ま、誰かに喋るほど興味のあることじゃないのかもね。」
肩をすくめてそう言うと、Aはジュースでも飲んで帰ろうと、食堂の裏にある自動販売機へと足を向けた。
食堂と室内練習場の間の通路を歩いていくと、その先に頭にタオルを巻いて素振りをしている御幸が見えてきた。
「あれ?御幸君…」
「…ん?あぁ、Aちゃん。バイト終わったの?」
「うん、さっき。御幸君は自主練?」
「まぁね。」
バットを肩に担いで、御幸はニッと笑ってみせた。
通常の練習だけでも相当な量だろうに、それに加えてこうして自主練することが、この青心寮では当たり前になっている。
全国に名の知れた強豪校であり、野球部専用の寮なのだからそれも当然かもしれないが…やはりAは素直に凄いと思った。
「沢村なら、部屋にいるんじゃねーかな?」
「…は?沢村君?…なんで急に沢村君のこと…?」
「いや、なんかAちゃん、沢村のこといつも気にしてるみたいだから。」
全く予期していなかったことを御幸に言われ、Aはポカンと口を開けた。
「…え…そんな風に見えた?…まぁ、気にしてると言えば気にしてるけど…」
沢村の中学時代の話やクリスとの関係などを直接本人から聞いているだけに、他の部員より確かに情は移っているが。
顎に手を当ててうーん、と唸りながら、Aは続けた。
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雪星(プロフ) - れいちぇるさん» こんばんは(^-^)/私も大好きです~(≧▽≦)なので気合い入れて書いてます(^^;はい、これからも頑張りますね!暫く原作丸写し気味な試合描写が続いてしまいますが…(^^; (2015年9月27日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
れいちぇる - こんばんは。 この、クリス先輩がプレーするところ大好きです!!感動です!!!(´;∀⊂) これからも更新頑張ってください!! (2015年9月27日 0時) (レス) id: fe9e519966 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - *モッチー*さん» *モッチー*さん、初めましてこんばんは(^-^)/…うぉぇっ!?ぜ、全部ですか!?うわー、うわー、なんか恥ずかしくてワタワタしております(^^;でも嬉しいですありがとうごさいます(≧▽≦)はい、これからも頑張りますねー(^-^)/ (2015年9月1日 19時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
*モッチー*(プロフ) - 初めましてε(*゚∇゚*)ノ゙雪星さんの作品がどれも大好きで全部読んでいます! 春っちと初めて会話シーンみて、ついニヤニヤしてしまいました(笑)これからも頑張って下さい(´∀`*) (2015年8月31日 21時) (レス) id: 2a54e6e35a (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - まもたんさん» スッキリしていただけたようでよかったです(>_<)応援ありがとうございます(*^^*)はい、頑張りますね(^-^)/ (2015年8月24日 21時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年8月22日 12時