4話俺と好感度 ページ4
くだらない
知友は大抵の事柄をその一言で処理する。今さっき先輩に呑みに誘われたのも、ファンサービスも、言うなれば自分自身も。
類は友を呼ぶとはよく言ったものだが、自分がくだらない人間だから、くだらない人が寄ってきてくだらないことばかり俺にふりそそぐのか？
なんて、知友の脳内は常にネガティブ思考だ。ポジティブになったことなんて、ここ最近あっただろうか。というか、産まれてこのかたそんな瞬間あったか？
何一つ変わらない表情を貼り付けたまま、知友は帰路についていた。いつもならもう少し人気のある場所だが、今日は時間的に人はまばらだ。
知友はこの感覚が嫌いだ。嫌いよりも怖いの方が正しいかもしれない。
ネバネバとした誰かからの視線を感じるようで、その実その誰かはいない。
声優を生業としいるせいか。いや、その前からこの感覚はあったような………
「声優の夏目知友さんですか？」
背後から男の声がした。知友より年上の、でもまだ若い声。
知友は内心めんどくさいだなんだと悪態をつきながらも、営業用の声と
「俺のこと覚えてる？」
そこに居たのは、見立て通り知友より年上の若い男。三十手前といったところか。だが、明らかに知友のファンではない。
なぜなら、その手に鋭利なナイフが握られていたから。
それでも知友は動じなかった。声優の知友の朗らかな表情のまま、「えっと……」と、困ったように呟く。
「ね…死ねよ…お前の、せっ、俺はっ」
ふと見ると男の顔は涙で汚れていた。嬉し涙でも、悲し涙でもない。憎悪。憎しみの類の涙だった。
紛れもなく、知友への怒りをたぎらせている男。
そんな人間を前にしても、未だ知友はファンに向ける表情のまま。
怒りの沸点を超えたのか、男はお決まりのセリフを叫んで知友にナイフを向けた。そのまま、前に身体を倒せば知友の身体を貫ける。
男は一瞬躊躇して、身体を前に運んだ。シナリオ通り、ナイフが知友の皮膚を破り脂肪と筋肉と血管を傷つけながら、骨にまで到達した。
そこで知友はよく戦闘モノの演技で使う、叫び声をあげた。あくまでも意図的に。
男はそこで自分の行動を振り返り、恐怖した。俺は人殺しかもしれない。捕まってしまうかも。怖い。嫌だ。
頭の中はすでに後悔でいっぱいだった。男は知友の身体からナイフを抜くことすらせず、その場をたちさった。
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。#vll - 鰓呼吸さん» 更新お疲れさま〜。 (2019年10月18日 23時) (
レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
鰓呼吸 - アジフライさん» あ、すいません！！今直しました。多分これでできるかと…… (2019年10月18日 10時) (レス) id: ec48264a34 (このIDを非表示/違反報告)
アジフライ - 名前変換なってなくないですか？ (2019年10月18日 3時) (レス) id: 95e04e1a30 (このIDを非表示/違反報告)
鰓呼吸 - 短気っきーさん» ありがとうございます！更新頑張れる気がします！！！ (2019年10月17日 0時) (レス) id: ec48264a34 (このIDを非表示/違反報告)
短気っきー - 面白かったです！更新頑張って下さい！ (2019年10月16日 23時) (レス) id: b716b56083 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鰓呼吸 | 作成日時：2019年10月14日 21時
