ハコヅメ＊６

・表　情 ページ28

No side


藤は疲れた体を引きずり、


少しだけ、と流し込んだ
アルコールのせいで熱くなった頬を
夏の夜風が冷ましてくれる。


頭の中に浮かぶのは
隣の部屋の住人のことで、


ちゃんと食べているだろうか。

彼女はまた顔を見せてくれるだろうか。

と、


街灯の灯りの下、
頭の中をぐるぐると行ったり来たり…


足取りは重くなるばかりだった。


藤が大きくため息をついているころ、


川合は相変わらず暗い部屋で
ただただ一点を見つめ、
クッションをギュッと握っていた。





side 山田



トイレから帰ると、
二人の会話が聞こえてきた。



『藤さん、全部お見通しでしたね。』



源「なにが、」



『源さん元気づけたかったんですよね？
　この前 私が電話で
　藤さんが元気ないって伝えたから。』



源「いや、俺は別に…」



認めたくないけど、
Aは俺には見せない顔で
源先輩を見つめている。



それは
とてつもなく庇護欲をかき立てる表情で。



だけど源先輩は
そんなAの可愛さを目に映すことなく
グラスの中身を喉に流し込んでいて、



俺は 複雑な気持ちで席に戻る。




山「川合大丈夫っすかね。」



と、平静を装って会話に割り込んだ。

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