Act.6 まだ、届かない【茅ヶ崎至】 ページ10
左京さんからの喝が入った103号室は静かになったものの、A争奪戦は冷戦になっただけでその後も攻防は繰り広げられていた。
翌日も仕事がある先輩は一抜けして就寝したが、今度は俺と万里のどっちがAと寝るか、という話になり結局じゃんけんで勝った俺と就寝することになった。
負けた万里も睡魔は結構キていたようで、俺のソファで就寝した。
Aはやっと寝れる、と小さく呟き、俺側のベッドに潜り込む。
『失礼しまーす』
至「いらっしゃい」
先にベッドに入っていた俺は布団を開けてAを迎え入れる。
ベッドに潜り込んだAをギュッと抱きしめた。
『ちょ、至さ、くるし』
至「んーいいね子供体温」
『バカにしてます？』
肩に顔をうずめる俺は、もうちょいからかってやろ、と思いつきAの腰に手を添えた。
『至さん、手』
至「ん？」
『腰触ってません？』
至「バレたか」
ハハ、と営業スマイルを浮かべる俺に、Aは文句を言う気もなくしたのか背を向けて寝始めた。
静寂が103号室を包む。
俺は腰を触る手を止め、Aの背中を見つめる。
至「…A」
小さくAの名前を呼ぶ。
どうせ聞こえないだろうと思って呟いた言葉はどうやら聞こえていたようで。
『…何ですか？』
至「え」
返事が来ることを考えていなかった俺は驚いて声をあげる。
「あー…」と俺は少しだけ言葉を濁したが、聞こえてしまったものはしょうがないと腹をくくり、言葉を続けた。
至「…さっきのさ」
『…はい』
至「社会見学とか言ったけど、割と本気なんだよね」
『…俺、男ですよ』
至「知ってる」
ぽつ、ぽつ、と俺とAの言葉が交差する。
Aは相変わらず俺に背を向けているから、全く表情が読み取れない。
『…俺』
至「…ん？」
『まだ、みんなと仲良くしてたいんです』
至「…そっか」
その言葉が指す意味を、Aより先に恋愛の場数を踏んできた俺は理解できてしまう。
受け入れはするが、応えはしない。
俺も今まで、そうやって生きてきた。
至「俺、ゲームと芝居以外にここまで本気になったことないから」
『…はい』
至「覚悟しててね」
『……はい』
最後の最後までAの表情は読めなかった。
どんなことをしても決して拒んだりしないAの背中を再度強く抱きしめ、そのまま眠りに落ちた。
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なる(プロフ) - 求めてた主人公…面白いです！！！ (2019年11月20日 14時) (
レス) id: 6c98839274 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - すごくおもしろかったです！続きが気になります！これからも更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2019年8月12日 16時) (レス) id: 94bf85f3ba (このIDを非表示/違反報告)
とりさん(プロフ) - 是非、続きが見たいです！ (2018年12月15日 0時) (レス) id: b16a249822 (このIDを非表示/違反報告)
たかはし(プロフ) - いやもうこれあかんですよ……私のツボを的確に押してくる感じ……あなた神ですか？ (2018年9月15日 23時) (レス) id: b1c8d6ac09 (このIDを非表示/違反報告)
朧流水斬(プロフ) - umiさん» 今更ながら勉強合唱という恥ずかしいミスを見つけてしまいました…失礼しました！合宿です！ぜひまたリクエスト失礼しますね！ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 5d1985f1dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：上原 | 作成日時：2018年7月20日 23時
