Act.7 早朝の恋心【伏見臣】 ページ11
今日の朝ごはんは何にしようか。
朝の日差しが入り込むキッチンで、俺は頭を悩ませていた。
昨日は目玉焼きトーストを作ったから今日は和食にしようか、と献立を組み立てていると、
『あ、おはよう臣』
臣「Aか、おはよう」
Aが寝ぼけ眼のままキッチンへやってきた。
昨晩、103号室が何やら騒がしかったが、それが関係しているのだろうか。
臣「A、寝不足か？だいぶ眠そうだな」
『あー…昨日至さんのとこいたから』
臣「…そうだったのか」
"至さんのとこにいた"。
その言葉に俺は何故か心臓を締め付けられた。
何故か、というのは俺自身まだハッキリとこの感覚に名前をつけられていないからだった。
あえて過去に経験した中から選んで言うならば、この感覚は片思いに近いものだと思うが、男相手にそれは考えにくいと思った。
じゃあ、この感情は一体なんだ？
俺はぼーっとしながら考え込んでいると、Aが近くまで来ていた。
『臣？大丈夫？』
臣「あ、あぁ、大丈夫。今日の朝ご飯は何にしようかと思ってたところなんだ」
『そっか。俺も手伝うよ』
臣「ありがとう」
俺は気を取り直して朝食の準備に取り掛かった。
今日は和食にすることを伝えると、Aは準備した野菜を水洗いし手際良く切っていく。
臣「ずいぶん手際がいいんだな」
『まぁ、今まで一人暮らしだったしね』
臣「そうだったのか」
Aの手元をジッと見ていると、それに気づいたAは照れたように笑った。
『臣、見過ぎ。緊張する』
臣「えっ、あ、すまない、つい……っ」
ハッとすると、何やら指先がチクッと痛んだ。
見ると左手の人差し指から血が滲んできている。
『えっ、ちょ、大丈夫？』
臣「あ、あぁ、でもこれくらい大したことないさ」
『でも結構血出てきてるし……ちょっとごめんね』
臣「えっ…」
そう言うとAは俺の人差し指を口に含んだ。
口内の湿った温かい感触が、人差し指の神経を通して俺の全身を駆け巡る。
俺はとっさの出来事に理解が追いつかなかった。
臣「…っ！」
『…ん、絆創膏持ってくるから、ちょっと待ってて』
臣「っ、すまない、ありがとう」
パタパタと足音を鳴らして絆創膏を取りに行ったA。
俺は先ほどAの口に含まれた人差し指を見て、1人ため息をついた。
ハッキリとわかった。
この感情は、恋だ。
Act.8 しかくなこころ【斑鳩三角】→←Act.6 まだ、届かない【茅ヶ崎至】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 714人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なる(プロフ) - 求めてた主人公…面白いです！！！ (2019年11月20日 14時) (
レス) id: 6c98839274 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - すごくおもしろかったです！続きが気になります！これからも更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2019年8月12日 16時) (レス) id: 94bf85f3ba (このIDを非表示/違反報告)
とりさん(プロフ) - 是非、続きが見たいです！ (2018年12月15日 0時) (レス) id: b16a249822 (このIDを非表示/違反報告)
たかはし(プロフ) - いやもうこれあかんですよ……私のツボを的確に押してくる感じ……あなた神ですか？ (2018年9月15日 23時) (レス) id: b1c8d6ac09 (このIDを非表示/違反報告)
朧流水斬(プロフ) - umiさん» 今更ながら勉強合唱という恥ずかしいミスを見つけてしまいました…失礼しました！合宿です！ぜひまたリクエスト失礼しますね！ (2018年7月26日 20時) (レス) id: 5d1985f1dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：上原 | 作成日時：2018年7月20日 23時
