溺愛される鬼少女② (ページ19)

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優しい人ページ19

実弥 side

朝、目が覚めると蝶屋敷だった。
…そうかァ、俺昨日…

最近調子が悪いからなァ。

「あ、あの…っ薬置いておくので飲んでください」

ビクビクしながら薬を置く蝶屋敷の子供。

「ありがとなァ」

俺はそんなに怖ェか？
いや、怖いよなァ。

『実弥さんは怖くないよ』

昔、あいつに初めて出会った時…

・

「実弥さん、実弥さん！」

下弦の鬼と命がけで戦ってボロボロになったAは蝶屋敷で治療中。
素手で戦うなんてなァ

「なんだァ」

「今日も来てくれたんですね！」

俺はAを死んだ妹と重ねてたのかもしれない。
最初はそう思ってたけどよォ、

必死に戦う生きようとするAが
温かくて太陽のようなAが

生きていくのを見ていたかったからかもしれねェ。

「元気になったかよォ」

「はい！もうすごく！」

まだ傷だらけだけどなァ。

「実弥さんはお兄さんっぽいですね。お兄ちゃんが出来たみたいで嬉しいです」

「…そうかよォ」

「はい！お母さんにお兄ちゃんが欲しいから産んだよって頼んだ事あります」

無理でしたけどね！と笑った。

…あの日から俺は変わった。
けど、Aといると鬼のいる世界なんて忘れてただ幸せな時間を過ごせる気がするんだ。

「…実弥さん。幸せって人それぞれですよね」

「どうしたァ？」

「私、人の幸せを守りたいけれど、自分も幸せでいたいんです」

そう言うと俺の手を握った。

「そうだなァ。お前は幸せになれよォ」

「私は実弥さんにも幸せになってほしいんですよ」

初めてそう言われた。
鬼殺隊として、兄として、幸せは捨てた。

「俺は母親を殺した」

誰かに自分の話をするのはいつぶりだったか。
Aは静かに頷きながら俺の話を聞いてた。

「実弥さんは優しい人ですね」

「…は？なんで」

「弟に酷いことを言われたのに実弥さんは弟の幸せを願ってるもの」

「でも、俺はアイツに…」

目を閉じて優しく俺の手を両手で包み込む。

「誰が何と言おうとあなたは優しい人」

・

優しいのはお前だろうがァ。
なんで俺は疑ったんだ。