04 ページ4
*
「足はもう大丈夫だってイテッ」
「右じゃねえ左だ」
「捻ったの右ですけどね!?」
「こうか」
「だからって持ち直さなくてもいいんですよ!?」
無遠慮に足を掴まれたことで、急だったからか後ろから倒れる私の上半身。後頭部と背中に鈍い痛み。あー……また記憶失うのか……影山さんへの恨みは忘れるなよ私よ……。
もう全然痛くないって言ってるのに。しかも何で右を――。
…………あ。
遅かったけれどようやく気づいた。足を見るのなんて、もうそれしか理由がない。
勢いをつけてがばっと起き上がると、靴が脱げたところだった。そっと膝に手を添える。
「……今更見たっていいことないですよ」
「知ってる」
それじゃあどうして、――なんて。
諦めて、私は自分から足あてごと下ろした。見えるのは足……は足でも、
所見なら小さく悲鳴を上げられても、おかしくないような、そんな様子の。
膝下から足首にかけてボロボロだ。火傷のような跡もあるし、痣もいたるところにある。
でもそれは、左足だって同じ。
右の方だけ決定的に違うのは、斜めに下ろされたその跡。ナイフか何か、ともかく鋭利な刃物のようなもので切られたことは間違いない。
「酷いもんですよね」
はは、と乾いた笑いが出る。
「でもやっぱり、どうしてこんなんなってるかわからないんですよ。誰か何か知ってるかって聞いたこともあるんですけど、皆知らないっていうし」
古傷が疼くとか、そんな表現でいいのだろうか。今でもたまに塞がったはずの醜いこの傷が痛んで、ざわつく。
悪寒のように。
見るだけ見ると言って何も言わない影山さんがなんだか癪にさわって、私は「もういいですよね?」と強引に足あてを元通りにする。自分の傷で自分の跡なんだから勝手にしたっていいはずだ。
「で、結局何がしたかったんですか」
「…………」
「見せもんじゃないんですよ」
「……悪い」
ちょっとの意地悪で言ったから、全然そんなつもりなかったのに、影山さんは謝るから。
別にいいのに、なんて頬を膨らませていると、ぽつり。
影山さんは呟いた。
「Aお前、」
「はい? 何ですか」
「……この」
一瞬だけ言い辛そうにしたのを、私は見逃さなかった。
否応なしに見逃せなかったのだ。
「お前、この怪我した時のこと、覚えてるか」
*
9人がお気に入り
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年9月18日 18時