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*
絶対に言うものか。言わない。言ってやらない。
もし私が影山さんの目の前で命を落とすことがあったとしても、いやそんなのは御免だけど、それでも言ってやるものか。
だから、代わりにこう言った。
「影山さんはねぇ、心配になるんですよ」
「お前の方が年下だろうが」
「不安で不安でしょうがないんです。だから私がいなくちゃって気になるんですよ」
言ってて、私も私で図々しいなと自傷気味に思った。つい笑ってしまうくらいに。
影山さんは意味がわからずに顔をしかめている。……そんぐらい不器用な方が逆に清々するのに。
「なんかよくわかんねぇけど、」
声の調子ですべてを悟った。……私は本当に無力だということを。そして彼の、意思の変わらなさを。
相変わらず城じゅうが騒がしい。
「俺は出てく。今日、日が沈んだら」
はい、と、名前を呼ばれることすらないのに返事をしていた。
*
……もう、どうしようもないのかもしれないなぁ。
どこかで諦めがついたようで、でもやっぱりまだ諦めていないような、そんな不思議な気持ちだった。
静かな場所は、探しても探しても見つからない。いっそもう、と昔はよく「お役目」をしていたその部屋にいた。
適当な文献を手に取る。ずっと思ってたけど、清水さんってかなりの収集家だよなぁと本棚を見ながら思った。
同時に、懐かしいその顔が思い出された。強引に場所を移ってしまってから、ほとんど会うことがなくなってしまったひと。
まだ、いろんな恩が返せていない。それなのにまたこんなことになっていて。耐えられなくて植物の挿絵の中に顔を埋める。ああ、もう嫌だ。力が欲しい。大好きな人を手放さないで済むような。
「何で……」
ぽろりと本音が零れるのって、もしかしたらこういう、一人で抱え込んでいる時なのかもしれない。
「何で、うまくいかないの……」
「うまくいく方法ならあるよ」
「そんなのがあったら買うのに……って、わあっ!?」
ガタガタと立ち上がって仰け反ると、清水さんはおかしかったのかクスリと笑う。
どうしよう。心臓がバクバクいっている。それにどうして、ここに彼女がいるの？
「い、岩泉さん探す中にいるはずじゃ……」
「ああ……あれね、何か馬鹿馬鹿しいから途中で抜け出してきたの」
「へっ」
「岩泉は岩泉の判断をしたのに、それをわざわざ問いただそうとするのは変だから」
*
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作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年9月18日 18時
