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記憶が、今だにままならなかった。

昔のことばかり思い出す。失っていた間のことだけでなく、足に激痛が走る前、旅に出てからの記憶がうっすらとしている。


優しく笑って私達に料理を振る舞ってくれたあの顔が、寂しそうに遠くを見つめたその顔が、申し訳なさそうにしていた顔が、ぱらぱらとこぼれていく。


迷っていた。


呼ばれたら、もしかしたら、わかるかもしれないのだ。

でもそれは危険との表裏一体。もしかしたら、もう、ここに戻れないかもしれない。


『嫌です』


ふと、自分の声が走馬灯のように蘇った。


『影山さんがいなかったら、――』


「……意味、ないので」


ぽつりと呟いた声は、形がなくて消えていく。

……でも、その瞬間、何だかすべてが決まって行ったような気がしてならなかった。


「行きます」


顔を上げた私に、黒尾さんはニヤリと笑う。


「決まりだな。本当にいいのか?」

「ええ。行くったら行きますから」

「頼もしいこったな」


彼の手の中の水晶が光る前に、私は預かっていた水筒を足元に転がした。

それじゃ、と言う声に黙って頷く。足が震えないように、少しずつ、歩み寄る。


「ちょっと酔うかもな、でもまあ大した事ねえよ」


独り言のような言葉を聞いて、ふっと身が軽くなる。


――あの日、あの時、あの場所で。


あの人に出会ってから。


*



眠くなるような『そこ』の中で、また記憶が蘇る。

そう。ついて来い、と言われるがままについて行った。そして、着いた場所は。


「……ここ、ですか?」


広い運動場だった。頷いた影山さんが上を見上げるのにつられて同じようにする。

すると。

アコーーン、と間抜けな鳴き声をして、鳥が翼をはためかせて旋回していた。

白い鳥。はらりと落ちてきた羽を手に取ると、白銀のように輝いていた。


「あれを討て」

「……はい。…………はい!?」


頷きかけて、――いやいやちょっと! ちょっと待って!?


「何でですか? あの鳥凄い綺麗なんですよっ!!」

「知るか。いざ討つとなったら、何が相手でもできるようにならねえと意味ねえんだよ」

「うっ……」


正論を浴びて言葉に詰まる。そりゃそうなんだけど、……でも。

鳴き声はアレでも本当に綺麗だ。太陽の光を浴びて、気持ち良さそうに飛び回っている。

……やれる? 私に?


*

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設定タグ:ハイキュー!! , FHQ , 影山飛雄   
作品ジャンル:ファンタジー
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年9月18日 18時

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