【FHQ】荒野往く旅路【影山飛雄】 (ページ10)

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用意された部屋には、ベッドの横に小さなメモのようなものが置かれていた。

少し考えて、そばに荷物を寄せる。起きたらすぐに出られるように。服装は、悪いけどそのままだ。上着だけ洗ってくれたというが、それは無理言って部屋に干してもらってある。

ふと、メモが目に入った。

伝える言葉――伝える言葉があるはずだ。ペンをとった。

何回か読み直して満足した後、私は生涯最後かもしれないふかふかのベッドに身体を預けた。

*

「だって、すぐに信じられません」

舞が涙声で言っていた。押し黙る村の面々の中心には、テーブルに置かれたメモがある。

そこには。

「……きっと、事情があったんだ」

諭すように茂庭が言った。誰もが皆気まずくなっていた。そこに、二口が声を上げる。

「変わんねぇよ」

舞が驚いて顔を上げる。その頭を強引に叩いてから、二口はテーブルに手をついた。

「何にしたって、あいつらが流れ者の変わり者だってことは変わんねぇ」

だから。

だから、頼むぞ――声に出さずとも、彼はそう呟いていた。

行方の知れない、一日限りの客人に向かって。

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