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でもそれは、残念ながら続かなかった。
突然現れ周囲を覆った瘴気に、眩暈がした。研磨さんも口をつぐむ。
そして、どこか見覚えのある懐かしい気配が、私たちの前に立ちはだかった時。
誰しも、思わず目を見開くのだ。
長身な黒いシルエットは、少しずつ姿が鮮明になった。慌てたのか影山さんの矢が音を立てる。研磨さんはゆっくりとそちらを向いていた。
「――やあ、元気にしてたか？」
おどけた口調は何もかも、変わらない過去のままだった。
続ける"彼"はいつものように、どことなく……楽しそうだった。
「油断は大敵だぜ、勇者達？」
それはまるで、
*
「……あ、クロ」
研磨さんが軽く呼びかけたことで、私と影山さんは危うく崩れ落ちるところだった。
ぎょっとする私たちに構わず、研磨さんは淡々と続ける。
「久しぶりだね」
「ん？ おー、研磨。何ヶ月振りだ」
「さあ……しばらくぶりみたいだけど」
「どうだ、皆元気にしてたか」
尋ねられてフルフルと首を振る研磨さん。少し目線を落として話す。
「結構前に村から出たから……最近のことはわかんない。でも、夜久くんはクロが勝手に庫の荷物持って行ったってすごい怒ってた」
「えー、アレ俺じゃねえのに」
「どう見たってクロの仕業でしょ。一晩でごっそりなくなったんだし……村だって小さいから」
「やっぱ山本になすりつけたらよかったか？ あーそうだ、俺アイツの家からも持ち逃げしたっけな」
「虎は全然気づいてなかった。周りは皆気づいてたのに」
「だよなあ」
「…………」
ほのぼのと交わされる会話に、一瞬状況を忘れそうになって――から、慌てて我に返る。
「いやいやいや黒尾さん！」
「何だどうした」
「何だじゃないですよ……研磨さんも大概だし」
「ごめん、つい」
つい、で済まされないような気もするけれど。影山さんはさっきから殺気を飛ばしているが、黒尾さんにはまるで気にする様子はない。
とりあえず「幼馴染」である二人の関係はよくわかった。だから、今ははやく本題に入らなければならない。
「……何しに、来たんですか」
「まあ、宣戦布告っつーか忠告？ みたいな？」
どうしてだか疑問符がつく。
「何たって天下の及川大王に喧嘩売ったわけだからねぇ。いやうん、わかるよ。ムカつくもんな」
「……じゃあ戻ってくればいいのに」
「それはそれで面白いこともあんだよ、研磨」
*
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作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年8月1日 18時
