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*
『――ッ、っおい、おいA!!』
焦ったような影山さんの声がする。
……いつか、どこかで同じような声を聞いた気がする。どこだったっけ……。
たぶん、記憶のまどろみの中。眠らされたから蓋が開いたのかもしれない、とどこか客観的に考えていた。
しばらくして。
ずどん、と地面が揺れた。どこか高いところから落ちて行くような感覚。
そして、揺さぶられるのは、体――。
「Aッ!!」
「…………え」
目を開くと、影山さんの顔が目の前にあった。
いつもの期限の悪そうな顔じゃない。焦って慌てているような表情に、思わず彼の名前を呼ぶ。
「……かげやま、さん……」
「っお前、平気かっ」
「…………おなかがすきました」
はァ? 思いっきりそんな声を出す影山さんの横で、私は上体を起こした。
ふう、と息をついてから首を横に振る。
「…………なんか、今まで何も食べてなかったような気がするんですよね…………」
「三時間前に食ったばっかだろうが。それよりお前今倒れて」
「こうしちゃいられません。はやく何か腹に入れなくては」
すとんと立ち上がった私を、影山さんが信じられない物でも見たように見上げてきた。
何ですか、と訊くと、柄にもなく目を擦る。そして。
「……A、足はどうしたんだ」
「足? 足はちゃんとついてますよ」
「じゃなくて、捻った」
「捻……?」
首を傾げた私に、立ち上がった影山さんは苛立った様子で言う。
「足捻ってただろ! モンスターに追いかけられてた時に」
「……? 影山さん、何言ってるんですか。私の足は傷跡あれどぴんぴんしてますよ」
「嘘だろ! いいからちょっと見せろ、……本当だ」
「何なんですか影山さん!!」
頭そろそろおかしくなっちゃいました!? 大分失礼な私の頭をはたいてテメェの方こそだろ!! と怒鳴る。
イテテと私が脳天をさすっていると、影山さんは背中を向けてブツブツ呟いていた。
「何なんですか……」
とにかく腹が減った、と森に視線を向けた途端、寝ていたはずの研磨さんが起き上がった。何故か地面に転がっている杖を拾い上げてから、あくびをしながら言う。
「……A、記憶が飛んでない?」
「研磨さんまで何言ってるんですか。むしろ余計な記憶を取り入れた影山さんの方が」
「やっぱり。じゃあ一個、質問に答えてくれる?」
「はい?」
何だろう。間髪いれずに研磨さんは問う。
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時