【FHQ】荒野往く旅路【影山飛雄】 (ページ44)

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彼らは城の美しき魔女に仕える小悪魔だ。仕える、というかその身を捧げているというか……常に二人で行動するコンビ。

言っておくが害はない。そもそも小悪魔なのだから何かしらできるのだろうが、行動が全部己の身は魔女の為、という原理で動いているので、そもそも攻撃しようとかそういう考えに及ばないのだ。

つまり基本的に穏やかだ。……やっていることは別として。

「それで、どうしてここに」

「うむ、お前らの様子を見てこいと仰せつかった」

「なのにA以外誰もいないとはどういうことだ」

「無駄足だったなあ、ノヤっさん」

「ああ、ホントにまったくだ、龍」

「…………」

それは意図的なんですか？

「……私がいるだけで充分なんじゃないですか？」

「ん、なんでだ？」

「他にいるだろ？」

「だって私、城を飛び出して――」

言いかけて、ああそうかと気がついた。

仰せつかった、と彼らは言った。つまり大王の命じゃない。彼らの行動言動はすべて、彼女の為なのだ。

「……いえ、何でもないです。健やかだって伝えてください」

「ならいい！そうだ、ひとつ伝言がある」

「このあと！俺たちとは別に来るんだと」

「……来る？」

「それを潔子サマは伝えたかったらしい」

「あとこれが、潔子サマからのお土産だ」

渡されたのは小さな瓶。首を捻ってから、もしや、と思って蓋を開け、匂いを嗅いだ。

「これって……」

「一度ぶんだから大事に使えとのことだ！」

「その優しさ、さすが俺たちの潔子サマ！」

「急ぐぜノヤっさん、潔子サマが待っている！」

「そうだな龍、早く潔子サマの所へ行かねば！」

二人の相変わらずな会話に苦笑したとたん、――不意に足取りがガクンと重くなった。

咄嗟に杖にしがみつくけれど、立っていられない。

なんとかもといた場所に座った時にはもう、視界は滲んでぼんやりとしていた。なんで、と呟きが零れる。

思い出したような彼らの声がした。

「そうだ、ひとつ忘れていたな！」

「それは潔子サマの調合による！」

「「だから眠くなるぞ、A!!」」

も……う、……遅い……です……。

遠のいていく意識の中で、微かにあの人の声が聞こえたような気がした。

『……おやすみ』

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