07 ページ37
*
足首に青根さんが摘んできたという薬草をすりつぶして塗り、水で冷やした手持ちのバンダナを巻きつける。
椅子にちょうどいい大きな石があったので、そこに座らせてもらった。そして、足を伸ばす。
――さて。
「岩泉さん……話、してもらっていいスか」
影山さんが声をかけると、岩泉さんは軽く頷いて座り直した。
日向さんたちの視線を浴びながら、変わらない、聞き慣れていた声で話す。
「自己紹介まだだったな。俺の名前は岩泉」
そして、こう続ける。
「少し前まで――及川の右腕だった」
その一言に、三人が息を飲むのがわかった。
私は小さく目を伏せる。これを、最初から話すと長いから――そして、私には、とても。
影山さんも黙っていた。その横で、日向さんが若干前のめりになる。
「大王様のところにいたってことですか? あ、だから影山とAと知り合いなんだ」
「まあ、そういうことになるな」
「……何で、城を出たの」
その二人の追放とは違うんでしょ、と研磨さん。確かに、と影山さんが顔をあげる。
「岩泉さん、及川さんの一番近くで……でも急に飛び出していきましたよね、何でだったんですか」
「なんかあいつムカつくから」
「…………」
みんな黙った。そんな空気をものともせず、岩泉さんは言う。
「で。影山とAは追放か?」
「はぁ……」
「俺が出てったすぐ後みたいだな、全然知らなかったけど」
「……一月も経っていなかったと思います」
小声で答えてから、私は顔を上げて岩泉さんに問うた。
岩泉さんの格好は、いなくなったとき、城にいたときのそれと全く変わっていない。
「岩泉さんは、城を出てからこれまでの間何してたんですか」
「何って? あー……まあすぐに追っ手がやってきたけど、逃げ切れたしな」
「追っ手……すげえ」
日向さんが感心した声を出すけど、まるで大したことなかったみたいに岩泉さんは話す。
「そんなにすごくねえよ。所詮は及川の手下だし」
「大王の手下を所詮扱い……」
「で、逃げてるうちに迷った」
「…………」
研磨さんが固まった。そののち「…………え?」ポカンと声を出す。
「や、でも森って複雑だろ? お前らよくここまでまっすぐ来れたな」
「いや、同じ道をずっと進めばいいだけですよ……」
「そうか? 樹海とかあったけどな」
「…………」
樹海って、ホントにこの人私らと同じ森にいたの?
*
6人がお気に入り
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時