約束──7 ページ7
いつもと変わらない、血の匂いの充満した大広間に呼び出されたと思えば、急遽新しい審神者が来ることになったと、こんのすけから連絡があったという。
「はっはっは……さて、聞くまでもないと思うが……どうする？」
男の目が妖しく光る。
美しく麗しいそれが、余計に彼等の怨念を煽るようだった。
「死ぬべき邪魔な奴らは、さっさと殺せばいいんだ」
「殺してしまいましょう。…あいつら相手に話が通じるとでも?」
「馴れ合うつもりはない」
笑みの消えたアイツの言葉に俺が答えると、他の奴らも次々と賛同した。
この時ばかりは話が合うようだ。
「そうか。俺はそれで良いが……本当に良いのか？……へしきり長谷部」
「……あぁ。もう、アイツらに捧げる忠誠心などない」
「……そうか」
あいつは、なぜか少し悲しそうにそう返事をした。
…………審神者の奴らに尽くすのをやめたのは、いつだったろうか。
過去の俺は、何をされても主、主と奴等のために働いていた。
でも、ある日突然気づいたのだ。
なぜ、あんな奴らにつくすのだ？
なぜ、そこまで奴等のために身を削るのだ？
一度そう思ってしまえば、もう後戻りはできない。
自分の中の仄暗い感情は、日を増すごとに大きく大きくなっていく。
…………抑えきれないほどに。
そしてその夜、審神者をこの手で殺めた。
…………皮肉にも、唐紅の月がでている、可憐で、触れればすぐに壊れてしまいそうな夜だった。
彼女の瞳と同じ……色。
かつて俺に愛を誓ってくれた、彼女の顔が頭によぎる。
また会おう、なんて約束をしたのは、何百年前だろうか。
申し訳ありません。
約束を、守れなくて。
申し訳ありません。
貴方の、側にいれなくて。
申し訳ありません。
期待を、裏切るような事をして。
…………それでも、俺は貴方が幸せに生きていてほしいと願っています。
たとえ貴方の隣に立つのが、俺ではなかったとしても。
俺は、想い続けています。
貴方の幸せを____。
俺は、そっと庭のほうをみた。
空にはあの日と同じ、唐紅の月がでていて、俺たちを静かに見ていた。
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作者名：茜月 | 作成日時：2022年4月8日 16時
