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1度溢れ出してしまった涙は、想いは止まらず、俺の頬を伝ってリナリアの花びらへ落ちていく。
花吐き病を患ってから約1年。
花を吐くのは不定期で。
1日に数回吐くこともあれば、1週間吐かない時もあった。
初めて俺が花を吐いた日。
つまりそれは、
俺が彼に心奪われた日。
去年の体育祭の日のこと。
あの日吹いた風を、俺は今でも覚えてる。
体育祭の目玉ともいえるクラス対抗リレーで、アンカーを任された彼。
リレーは次の競技だというのに彼を応援するために既にギャラリーが出来ていた。
今は部活には入っていないが、中学生の頃は陸上部だったらしい。
だったらしい というのは、彼から直接聞いた訳ではないから。
彼はそのルックスと明るい性格で、俺の学年では1番モテる男だと言われていた。
そんな彼の噂は別のクラスの俺にまで届いていた。
(ほんっと完璧なんだな〜。)
見た目良し、中身良し、運動神経良し。
非の打ち所のない彼を一目見ようと俺もギャラリーに加わった。
リレーは始まり、彼に2位でバトンが渡った。
彼が俺達の前を走り抜ける。
瞬間に吹き付けた、風。
「やばい!やばい!!かっこいい!!!」
そんな女子生徒達の叫びをどこか遠くに聞きながら、俺は、前を走るランナーを抜いて、見事1位でゴールした彼の後ろ姿を眺めていた。
どくどくと心臓がうるさい。
ずくずくと身体中を血液が巡る。
頬は熱く、赤くなっている事は容易にわかる。
彼が前を通った瞬間、
風が吹いた瞬間、
俺の心は彼に奪われたのだった。
それからだった。
俺が花を吐くようになったのは。
昔から読書が好きで、花吐き病については知っていた。
なんて病気にかかってしまったんだ そう思った。
はじめはどうにか治そうといろいろ調べたりもした。
でもやっぱり花吐き病を治すには、恋を実らせるか諦めるしか方法は無くて。
両想いだなんて、クラスも違えば喋ったこともない。
ましてや彼は俺の存在すら知らないのだ。
何年かかるかはわからない。
それでもいいから、もうこのまま彼と関わることなく、想いが風化するのを待とう。
そう心に決めた矢先、
彼と同じクラスになったのだ。
何も知らないから彼は俺と仲良くしてくて、一緒に行動するようになった。
嬉しくて嬉しくてたまらないのに、素直に喜べない。
ああどうか、俺のこの気持ちには気づかないでくれ。
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紫央梨(プロフ) - もさくさん» シリーズ化、嬉しいです(^-^) 待ってます(o^^o) (2019年8月12日 10時) (レス) id: ee37a9445e (このIDを非表示/違反報告)
もさく(プロフ) - 紫央梨さん» 紫央梨さんはじめまして、コメントありがとうございます!いつも楽しくだなんて勿体ないお言葉です(><)実は「教えてあげる」の2人私もかなり気に入っているのでシリーズ化もありかなって思ってたり、、、また2人の話を書く時があればぜひぜひご覧下さい! (2019年8月12日 9時) (レス) id: 64ff355b3f (このIDを非表示/違反報告)
紫央梨(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませて頂いております。「教えてあげる」とても好きです(//∇//)続きが気になります!!これからも更新楽しみにしています(*≧∀≦*) (2019年8月11日 13時) (レス) id: ee37a9445e (このIDを非表示/違反報告)
もさく(プロフ) - aoiさん» お返事遅くなってしまいすみません。aoiさん、コメントありがとうございます!花吐き病パロはずっと書きたいと思っていたお話だったので書いている私が1番楽しんでしまいました。更新頑張ります!ありがとうございました! (2017年9月13日 9時) (レス) id: 64ff355b3f (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - 初めまして(*´-`)花吐き病、とても素敵なお話でした!これからも更新楽しみにしています。 (2017年9月6日 19時) (レス) id: 063293b567 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もさく | 作成日時:2017年8月28日 0時