さくらの育て方 2【S受け短編集】

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「うっ...うぅ、がはっ...」




ああ、苦しい、苦しくて熱い。



むせ返る様な嘔吐感と、焼けるような喉の痛み。









二宮にトイレに行くと伝えた後、俺はトイレではなく校舎裏に来ていた。





「は、はっ。」



ようやく収まった吐き気。

呼吸を整え、目尻に浮かぶ涙を拭った俺は、屈んだ。

自分の吐いた、







花 を拾うために。








これはまだ誰も知らない、俺の秘密。








俺は、









花吐き病を患っている。




















『花吐き病 って知ってる？』


先ほどの二宮の言葉を思い浮かべる。




ああ、よく知ってるさ。


喉を花が通る度に、感じる苦しさも痛みも。


花を吐く度に、自分は叶わぬ恋をしているんだと痛感する切なさも。


吐いた花が枯れていくのを見る度に、その花の行く末を自分の恋に重ねては痛む胸を。









『両思いになると、治るらしい。』


それは違うよ、二宮。


たしかに両思いになれば花吐き病は治るけど、もう1つ、治す方法があるんだ。


それは、





恋を諦めること。





すなわち、





誰かに恋する気持ちを捨てること。









簡単そうで、難しい。



それができたらとっくにやってる。


今までに何度諦めようと思ったことか。


両思いになるのが無理なのなら、諦めるしかない。


それなのに、できなくて。


彼に接すれば接する程、想いは溢れて、花が生まれる。


その花を見る度に、自分は恋をしているんだと、彼が好きなんだと思い知らされる。


諦めらるはずがない。






だってこんなにも、好きなのだから。









花吐き病を発症する条件はたった1つ。

ただ唯一にして絶対の条件。

花吐き病患者の吐いた花に触れること。






いつどこでその花に触れてしまったのかはわからない。

もしかしたらずっとずっと昔、記憶に残らない程昔のことなのかもしれない。

だけど、俺が花吐き病にかかっているのは変えようのない事実で。








自分の吐いた花を見つめる。




俺が吐く花は、いつも決まってリナリアだ。



花にまで宿った自分の浅はかな願いに嫌気が差す。



この花は自分の心の奥深くを表しているとでも言うのだろうか。








浅はかで薄情な想いなど、気づかれる前に消えて無くなればいいのに。




そう、思っているはずなのに。









溢れ出した涙は、




喉の痛みによるものなのか、




それとも、




胸の痛みによるものなのか。






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