temperature-3 ページ3
「どうだかね」
触れていた体温がするりと離れて冷たいグラスに移った。俺は彼が酒を流し込む喉を、見ていた。
やだな。男の味しめたんじゃねーのとか思ってんのかな。誰にでも媚びるような態度とる人間だと思われているわけではないにせよ。
「心当たりねーし狙ってやってねえよ」
「そんなのわかってるし。まぁ、俺のだけど？って思いながら聞き流したけど」
お、お、おま、いや心の声だとしてもだよ。そしてそれが事実だとしてもだよ。
そこそこ悪めのドヤ顔で見透かすような視線に心臓が派手にバッコンバッコンいう。何だよ、くそ。かっけえな。
いつか俺がラブコンテンツであると言ったその男が磨きをかけたガチのやつで突進してくる、物理的にではなく。いやでも背後が壁だったら間違いなくドンしてきてただろ。物理的にも突進してきてただろ。
なんつってる間に迫り来る、覗き込んできた黒の目に体温が上がる。俺いま、どんな顔してんだろう。彼の言う可愛い顔してんのかな。
「俺のだよね？」
「う、うん」
「なんで動揺してんの」
「するだろ、普通するだろそんなのくっそ格好良い顔して言われたら」
動揺に任せて思いっきり心の声が口から出てしまってハッと口を閉じたところで時既に遅し。
ふうん、なんて楽しそうにニヤリと笑う彼に唇を奪われて、そのまま。このとんでもなく格好良い獣に俺は食べられてしまうんだ。
彼はとても大切な物に触れるように、そっとそっと俺を抱き締めて嬉しそうに笑う。
「格好良いと思ってもらえるひとになりたかったから、いまちょお嬉しい」
「そんなん昔っから言われてるじゃん」
「じゃなくて。誰にでもじゃなくて」
流れ的にそんなことはわかっていながら誘導すれば優しい腕に力が乗ってぎゅうぎゅうにされる。まじで嬉しいんだな。こゆとこかわいーよね。
彼の愛情表現は真っ直ぐで時々くすぐったいほど。包み込んでくる腕も、背中とか髪に触れる指先も、耳に寄せた唇も全部フルフル使って「愛してる」をくれる。
そのまま言葉にする時もあるし、何も紡がずとも伝えてくる時もある。俺はただ受け取るだけの時もあるし、少しばかり上乗せして応える時もある。
今夜は。ただ、体温の赴くままに。
temperature-あとがき→←temperature-2
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 224人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
7oh(プロフ) - タルトコさん» タルトコさん、こんばんは！待っていてくれてうれしいです。気温が下がってきたので温かくしてまったり読むのにちょうどいいかな、と思ったりしたりして。ご褒美になったならこれ幸いです。抜歯まじで大変でした…タルトコさんもお気をつけて（普通6本も抜かないね (2020年10月20日 22時) (
レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
タルトコ(プロフ) - こんばんは。そしてお待ちしておりました！久々の、甘くて柔らかくてやっぱり甘い、2人のひとときに心が潤いました。一日の最後に嬉しいご褒美…ありがとうございました。そして抜歯、大変でしたね汗！どうかお大事に…。 (2020年10月20日 0時) (レス) id: 60a0110370 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：7oh
| 作成日時：2020年10月19日 22時
