Now, at this time.-1【S】 ページ14
「生まれ変わったら男と女どっちになりたい？」
特に何かあったわけでもない、いつも通りの一日の終わりに肌触りの良いタオルケットを分け合うベッドの上。さっきまで見ていたテレビの影響か彼は唐突にそんな質問を投げてきた。
「おん、男かなぁ」
「女って言い掛けなかった？」
咄嗟に口を突いて出たのを拾って笑う彼は楽しそうで。どうせだったら今と違う方になってみたいかなという頭を過ったのは、単純に俺には難しそうだということだった。
「いや多分だけど俺、毎日化粧すんのとか無理だわ。松潤そゆの上手そうだよね」
「女前提なの」
「だったらの話」
「まぁちょっとなってみたい気持ちはあるかなぁ。どんな感覚か気になる」
「感覚？体とか？」
決定的に作りが違うからなぁと思ったんだけど彼はそうじゃないと答えた。そして“前時代的だけど”なんて言いつつ続ける。
「女は感情的で男は理性的、みたいなのってどんな感覚なんだ？と思って。そもそも別の生き物みたいなこと言わない？」
「言うわ。聞いたことある」
「何が違うのかは、なってみないとわかんないから気になる」
「確かにそれは俺も気になるかも」
「女同士になることもありえるよ」
生まれ変わりが本当にあるかどうかなんてのは、この会話に於いて重要ではなく。だから同時にまた同じ世代に生まれるかどうかなんてのも突っ込むべきとこでは、ない。
きっとこいつは女だったら化粧うまくて髪も艶々でオシャレで美人で、絶対モテるんだろうなぁ。俺はどうだろう。どれも上手に出来そうにないし例えば同じクラスにいたとしても彼とは別のグループなんだろうなぁなんて思う。
「そしたら交わんなそーだなあ」
「そうかな。今だって元を辿れば、何もなかったら接点なかったかもよ」
「運命が導く的な？必然で出会える的な？」
「それできっと俺は次も翔くんを好きになるよ」
こんなフワッとした例え話の来世でも、彼は俺と出会う確信があるらしくて。甘ったるいほどの言葉を何でもないことのようにさらりと言われて、眼球がじわっと熱くなる。
こいつが言うと絶対になる気がするんだよ。俺でいうところの言霊的なものとは少し違う感覚なんだけど、何だろね。それだけ俺が彼に心酔してるのかもしれない。
ちょっと泣きそうだとか嬉しいとか言うのは恥ずかしくて、うまい言葉も出てこなくてただタオルケットの下で彼のTシャツの裾を掴む。
Now, at this time.-2→←I need to see you-あとがき
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 224人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
7oh(プロフ) - タルトコさん» タルトコさん、こんばんは！待っていてくれてうれしいです。気温が下がってきたので温かくしてまったり読むのにちょうどいいかな、と思ったりしたりして。ご褒美になったならこれ幸いです。抜歯まじで大変でした…タルトコさんもお気をつけて（普通6本も抜かないね (2020年10月20日 22時) (
レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
タルトコ(プロフ) - こんばんは。そしてお待ちしておりました！久々の、甘くて柔らかくてやっぱり甘い、2人のひとときに心が潤いました。一日の最後に嬉しいご褒美…ありがとうございました。そして抜歯、大変でしたね汗！どうかお大事に…。 (2020年10月20日 0時) (レス) id: 60a0110370 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：7oh
| 作成日時：2020年10月19日 22時
